(写真:自身初のMVPを受賞した田中。ベストファイブは4季連続 ©B.LEAGUE)

 10日、男子プロバスケットボールリーグ「B.LEAGUE」の年間表彰式「B.LEAGUE AWARD SHOW2019-20」が閉幕した。3日間かけて行われた表彰式最終日は、レギュラーシーズン最優秀選手賞(MVP)が発表され、リーグ最高勝率のアルバルク東京・田中大貴が初受賞。レギュラーシーズンベストファイブは田中の他、富樫勇樹(千葉ジェッツふなばし)、金丸晃輔(シーホース三河)が4季連続で選出された。ライアン・ロシター(リンク栃木ブレックス)、藤井祐眞(川崎ブレイブサンダース)は初受賞だった。

 

 最優秀新人賞は富山グラウジーズの前田悟。今季から新設された新人賞ベストファイブには前田を含め、福岡第一高校在学時に特別指定選手として11試合に出場した河村勇輝(三遠ネオフェニックス)らが選ばれた。

 

 今季のB.LEAGUEは新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、レギュラーシーズンは途中で中止となり、年間王者を争うチャンピオンシップやB1、B2の入れ替え戦は行わなかった。地区優勝のみが決まり、年間優勝チームはなし。異例のかたちで幕を閉じたシーズンの表彰式はオンラインで3日間実施された。

 

(写真:オンライン会見で受賞の喜びを語った田中)

 MVPにはA東京の田中が輝いた。「今まで受賞できなかった。評価してもらい、受賞できたことはうれしい。もっといい選手になるために、“頑張らなきゃいけない”という気持ちになったことを感謝しています」と喜んだ。

 

 今季は41試合中39試合に出場。1試合平均得点11.1点、同4.8アシスト、同1.6スティールを記録した。ディフェンスでも貢献するなどオールラウンダーぶりを発揮してみせた。

「オフェンス、ディフェンス。すべてのことで高いレベルでやりたいと思っている。それが長所だと思っており、ディフェンスの部分はプライドを持っています。その点を評価されたことはうれしい」

 

 指揮官のルカ・パヴィチェヴィッチHCはビデオメッセージで「大貴はオールラウンダーな印象です。シュート、得点能力、パス。チームメイトを生かす、クリエイティブさがあり、ディフェンスとリバウンドもできる」とコメントを寄せ、「非常にタフで、ビッグゲームでの集中力が並じゃない」と称賛した。

 

 指定席とも言えるベストファイブは、富樫や金丸と並び、4季連続での受賞となった。

「昨季は自分自身が納得していないかたちでアワードの舞台に立たせてもらったというのが正直な気持ち。今季は昨季よりかは成長し、いいパフォーマンスが出せた。チームが苦しい中でアジアチャンピオンズカップで優勝することができ、いいシーズンを送れた」

 

 B.LEAGUEの顔ともいえる存在だ。日本代表としても主力。昨年のW杯は日本代表は全敗に終わった。「世界に出るとまだ高いレベルにはなっていない。まだまだ未熟な選手。自分自身が納得するためにも世界で結果を出したい」と田中。1年延期となった東京オリンピックに向け、更なる飛躍を誓った。

 

 代表狙うホープたち

 

(写真:授賞式はMCの田中大貴アナウンサーとオンラインでのやり取りとなった前田 ©B.LEAGUE)

 今季から新人賞が拡大された。ベストファイブが新設され、その中から最優秀新人賞が決まる。ベストファイブは前田、河村、コー・フリッピン(千葉ジェッツふなばし)、熊谷航(シーホース三河)、シェーファー アヴィ幸樹(滋賀レイクスターズ)の5人。最優秀新人賞は前田が受賞した。

 

 青山学院大卒の前田は1試合平均11.5得点を挙げるなど全41試合に出場。8試合目からスターターの座を勝ち取るなど、ベンチからの信頼も手にした。23歳のシューターは「シーズンが始まる前から視野に入れていて、獲得したい賞」を見事に射止めた。

 

「自分の武器はシュートなので、そこを極めて生きていこうと思っていました」と前田。「今まで画面越しで観ていた先輩たちと戦え、毎試合毎試合楽しかった。吸収するものが多かったです」と日々成長を実感したという。契約更新も決まり、来季も富山でプレーすることが決まった。
「チームとしてはチャンピオンシップ出場。個人としてはもう一度成長し、このAWARD SHOWに帰ってきたい」

 

(写真:持ち味のスピードを遺憾なく発揮。大きなインパクトを残した河村 ©B.LEAGUE)

 インパクトという点では河村も負けていない。高校3年生ながら特別指定選手として三遠に加入。B1最年少出場、得点を記録した。スピードを生かしたドライブ、鮮やかなパス、スリーポイントでファンを魅了。11試合でのスタッツは平均12.6得点、3.1アシスト、1.5スティールだった。しかし、受賞を喜びつつも、本人から満足した様子は見られない。
「まだ実感するほどの実力はないと思います。短い期間だったので、1年を通してコンスタントにプレーし、結果を残すことで実力を実感できる」

 

 日本バスケ界のホープに対し、プロの壁はどう立ち塞がったのか。
「課題はフィジカル。そして試合に出ている時にゲームコントロールをし、どう勝利に結びつけられるかが課題として残りました」
 その課題をクリアするためには「ある程度の筋力、体幹トレーニングが必要。ゲームコントロールに関してはチームとのコミュニケーション能力とバスケIQをもっと磨いていきたい」と語った。

 

 23歳の前田、19歳の河村。視線の先には日の丸を背負うことだ。
「プロとしてやっている以上、オリンピックでプレーしたい。まだ課題も多く、実力もまだまだ。もっとうまくなって日本代表に近付く存在になりたい」(前田)
「将来の夢はオリンピックや世界選手権で戦うこと。そこはブレずに努力をして夢に近いていきたい」(河村)

 

 来季は3地区制から2地区制へと編成が変わる。勢力図はどう変わり、今季は不在となった王座はどのチームが手にするのか――。5季目の戦いに注目したい。

 

 主な受賞者は次の通り。

 

【レギュラーシーズン最優秀選手賞】

田中大貴(アルバルク東京) 初

 

(写真:B.LEAGUE初の個人賞3冠を達成した藤井 ©B.LEAGUE)

【レギュラーシーズンベストファイブ】

ライアン・ロシター(リンク栃木ブレックス) 初
富樫勇樹(千葉ジェッツふなばし) 4季連続4度目

田中大貴(アルバルク東京) 4季連続4度目

藤井祐眞(川崎ブレイブサンダース) 初

金丸晃輔(シーホース三河) 4季連続4度目

 

【ベストディフェンダー賞】

藤井祐眞(川崎ブレイブサンダース) 初

 

【ベスト6thマン賞】

藤井祐眞(川崎ブレイブサンダース) 2季ぶり2度目

 

【最優秀新人賞】

前田悟(富山グラウジーズ)

【新人賞ベストファイブ】

コー・フリッピン(千葉ジェッツふなばし)

前田悟(富山グラウジーズ)

熊谷航(シーホース三河)

河村勇輝(三遠ネオフェニックス)

シェーファー アヴィ幸樹(滋賀レイクスターズ)

 

(写真:今季、三河に移籍したガードナーは新天地でも得点王 ©B.LEAGUE)

【得点王】

ダバンテ・ガードナー(シーホース三河) 23.4点 3季連続3度目

【アシスト王】
富樫勇樹(千葉ジェッツふなばし) 6.5アシスト 初

【リバウンド王】

ジャック・クーリー(琉球ゴールデンキングス) 13.3リバウンド 初

【スティール王】

ベンドラメ礼生(サンロッカーズ渋谷) 1.8スティール 初

【ブロック王】

ジョーダン・ヒース(川崎ブレイブサンダース) 1.5ブロック 初
【ベスト3P成功率賞】

松井啓十郎(京都ハンナリーズ) 47.2% 初

【ベストフリースロー成功率賞】

金丸晃輔(シーホース三河) 97.4% 4季連続4度目

 

【BREAK THE BORDER賞】

馬場雄大(アルバルク東京) 初

CUE4(アルバルク東京) 初

 

【ベストタフショット賞】

石井講祐(サンロッカーズ渋谷) ※2019年11月3日のシーホークス三河戦(ウィングアリーナ刈谷)

 

(写真:テレビ出演、SNSなどで話題を呼んだ田渡 ©B.LEAGUE)

【レギュラーシーズンMIP】

田渡凌(横浜ビーコルセアーズ) 初

 

(文/杉浦泰介)