サッカーファミリーを救おう――。JFAはコロナ禍により資金難に陥った街クラブに、救いの手を伸ばし始めた。

 

 

 5月の第2週に公表した財政支援事業計画によると、無利子、無担保を条件に、全体で「20億円規模」(協会関係者)を融資するという。

 

 街クラブは日本サッカーを底辺で支える、いわばグラスルーツ。スポーツの発展は普及・育成・強化からなるが、一番重要なのが普及である。稲作にたとえるなら田植えにあたる。この部分を重点的に手当てするという協会の判断は全くもって正しい。

 

 JFAの田嶋幸三会長は「街クラブやスクールが一度潰れてしまえば、復活するのに大変な時間とコストがかかる。火事にたとえるなら、消せる時に消しておくということだ」と語っていた。

 

 Jリーグがスタートしたのが1993年。それによって日本代表が強化され、初めてW杯出場を果たしたのが98年(フランス大会)。02年には韓国と共同で、アジア初のW杯を開催した。

 

 平成におけるスポーツ界の勝ち組は、間違いなくサッカーだった。それが証拠に平成のスポーツ中継視聴率ランキングベスト5は、いずれもサッカーなのだ。そのうちの4つまでが日本代表戦が占めた。このまま右肩上がりで推移するかと思われていた矢先のコロナ禍、日本サッカーは、どこに向かうのか。

 

 再び田嶋。

「これまで僕たちは巨額な放映権料やスポンサー収入に支えられてきた。しかし、ポストコロナ時代の協会のあり方を考えると、スポーツのできる喜び、環境づくり、あるいは国民の健康に寄与する方策を、今まで以上に明確に打ち出す必要がある。その意味で今回のコロナ禍は、日本サッカーの足元を見つめ直すためのターニングポイントになるかもしれません」

 

 Jリーグは4月の時点で全国39都道府県に本拠地を置く56クラブ(J1~J3)の施設を新型コロナウイルスのPCR検査場として提供する考えがあることを明らかにしていた。

 

 これを受け、鹿島アントラーズの本拠地カシマスタジアムでは、ドライブスルー方式のPCR検査を5月11日より実施している。

 

 スタートから4半世紀を超え、Jリーグは「地域密着」「地域貢献」の色を、ますます強めつつある。

 

 スポーツ界における「ソーシャル・イノベーション」のフロントランナーと言ってもいい。他の競技団体も続いて欲しい。

 

<この原稿は『週刊漫画ゴラク』2020年6月12日号に掲載されたものです>

 


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