新型コロナウイルスのパンデミックにより、世界中のスポーツが延期や中断、中止に追い込まれる中、ドイツのブンデスリーガ(1部と2部)が5月16日、約2カ月ぶりに再開した。

 

 

 リーグの再開を巡っては賛否が分かれた。ドイツ公共放送ZDFが公表した世論調査によると、賛成27%に対し、反対62%。慎重派も含めると、ドイツ国民のほとんどが再開には懐疑的だったようだ。

 

 いわく、いくら無観客試合とはいえ、勝てば喜びのあまり、ステイホームを忘れ、ほろ酔い気分で街に繰り出す者もいる。サッカーが行動制限の妨げになりはしまいか。もっともな意見である。

 

 一方で、サッカーはドイツ人にとって最も人気のあるスポーツである。コロナの暗雲に覆われている今だからこそ、娯楽が必要だ――。賛成派の中には「夫がサッカーで気持ちを発散させないと、それが妻に向かう」というものもあったという。DVへの懸念だ。

 

 再開にあたり、リーグは感染予防対策を徹底した。①無観客試合での開催。②週に2度のPCR検査実施。③出場選手、審判、監督以外はマスク着用。④フィジカルスタッフは手袋着用――。これだけじゃない。これまで、見られたゴールの際の抱擁やハイタッチは自粛を求められ、「肘タッチ」「足タッチ」に代わった。またラインを割ったボールは、タオルで丁寧に拭かれてピッチに戻された。

 

 現在、ブンデスリーガでは6人の日本人がプレーしている。2部ながら、キラリと光ったのがハノーファー96のMF原口元気だ。

 

 23日、アウェーでのオスナブリュック戦に出場した原口は2カ月間のブランクを全く感じさせないプレーぶりで、存在感をアピールした。

 

 とりわけ、3対2で迎えた後半40分に決めたとどめのシュートは目が痙攣するほど美しかった。

 

 ピッチ中央でボールを持った原口はトップスピードで駆け上がり、ペナルティーエリアの手前で右足を振り抜いた。ボールは横っ飛びしたGKの差し出した左手をわずかにすり抜け、ゴール右隅に吸い込まれた。

 

 切れのいいドリブルといい、加速するスピードといい、これぞ原口である。

 

 原口はこの11分前にも大きな仕事をしている。スコアは1対2。後方からのフィードを頭でワントラップしてペナルティーエリアに持ち込んでファウルを誘い、PKを獲得したのだ。

 

 こうした原口の活躍もあり、このゲーム、4対2でハノーファーが勝利した。

 

 殊勲の原口は自身のSNSにて<少しでもいいニュースが届けられるように頑張ります。どんな形でもサッカーできるのは最高ですね>と発信した。

 

 日本ではJ2の再開とJ3の開幕が6月27日、J1は7月4日に無観客で再開される予定だ。再開にあたってはブンデスリーガの感染防止策も参考にするという。

 

 村井満チェアマンは「医療機関を圧迫したり、民間の検査のリソースを我々が奪ってしまうことがないように十分注意しながら進めていきたい」と語っている。

 

<この原稿は『サンデー毎日』2020年6月21日号に掲載されたものです>

 


◎バックナンバーはこちらから