FIFA女子ワールドカップカナダ2015はグループリーグがスタートし、日本代表のなでしこジャパンは日本時間9日、スイスとの初戦を迎える。前回大会優勝のなでしこは、史上2チーム目の連覇を狙う。
 大会に向け、チームの仕上がりは悪くない。国内合宿を経て、直前に行われたニュージーランド戦、イタリア戦では、ともに1−0の勝利。課題とされた守備で2試合連続無失点と結果を残し、本番へ弾みをつけた。

 前回大会同様、岩清水梓、熊谷紗希のセンターバックコンビは不動だ。佐々木則夫監督は「浅いチャージではボールは取れない。そのなかで深いチャージができるか。各局面の中での質を求め、ハードワークができれば」と全員に高い守備意識を求める。

 直近2試合ではチャンスはつくりながら、シュートが少なく、得点が1点ずつと攻撃に課題が残った。ただ、イタリア戦では左サイドハーフで起用したDF鮫島彩が敵陣を切り裂くなど、攻撃のバリエーションは広がりそうだ。指揮官も「ケガもあって、苦しい時期がありましたが、今は非常にいいコンディションになってきた。彼女の持ち味はスピードと、独特のタッチ。ライン際での鋭い突破とクロスでチャンスを演出してほしい」と鮫島に期待を寄せる。

 何より、ピッチに立てば男女初の6大会連続出場となるMF澤穂希の代表復帰は大きい。
「これまでの実績はもちろん、クラブでの試合を観ていても、一番戦っている姿勢がみられるんです。彼女がプレーすることで周りの選手を鼓舞できる。僕があれこれ言うよりも、彼女の姿を見てくれればいい。そういった存在は、今のなでしこにとって重要だと感じています」
 佐々木監督は、背番号10に絶対的な信頼を置いている。

 もちろん、存在だけでなく、プレーでも彼女の働きは欠かせない。ニュージーランド戦ではコーナーキックに対し、ゴール前でうまく相手DFのマークを外し、決勝ゴールを決めた。ここぞという時の決定力は衰えを感じさせない。

「前回は阪口が守備的で、澤が前に出るという役割分担でした。今回は逆に澤が相手の攻撃の芽を積んで、阪口が攻撃参加するというバリエーションも増えてくるでしょうね」と指揮官は語る。澤が守りを安定させることで、MF宮間あや、MF川澄奈穂美、FW大儀見優季、FW大野忍ら中盤、前線の選手が、より攻撃にウエイトを置きやすくなる。

 カギを握るのは主力ではなく、控えメンバーだろう。前回も当初は控えだった川澄が準決勝で2ゴールをあげ、チームに勢いをつけた。昨季のなでしこリーグ得点王・FW菅澤優衣香あたりがラッキーガールになるとおもしろい。佐々木監督も「サブの選手が出てきて活躍するといういい循環ができれば」と新しい力の台頭を望んでいる。

「第1戦のスイスは非常にいいチームです。スイス戦の戦いが、その後のW杯の指標になることは間違いない」
 佐々木監督は、代表発表時から初戦が重要との考えを示してきた。グループリーグで対戦するスイス、カメルーン、エクアドルはすべて初出場。よほどのことがない限り、グループリーグ突破(2位以上と3位の上位4チームが進出)は間違いないだろう。本当の戦いは決勝トーナメントからだ。

 それだけにグループリーグは、トーナメントへチーム力をさらに高める場としたい。初戦をいかに戦うかは、なでしこにとって大きな試金石となる。
「どこの国もレベルが上がり、個の質が上がっている。そのなかで連覇をするのは簡単なことではないと分かっています」
 佐々木監督も厳しい道のりになることは承知の上だ。4年前も紙一重の激戦を制して頂点にたどりついた。「連覇に挑戦できるのは、我々なでしこジャパンだけ」と話す指揮官の下、23名が一丸となって、もう一度、世界へチャレンジする。

<女子W杯日程>

グループリーグ
6月9日(火)11時〜 対スイス
6月13日(土)11時〜 対カメルーン
6月17日(水)6時〜 対エクアドル

決勝トーナメント
6月21日(日)〜24日(水) 1回戦
6月27日(土)、28日(日) 準々決勝
7月1日(水)、2日(木) 準決勝
7月5日(日) 3位決定戦
7月6日(月) 決勝

※時間は日本時間