FIFA女子ワールドカップカナダ大会は日本時間9日、グループCのなでしこジャパン(日本女子代表、FIFAランキング4位)が初戦を迎え、スイス代表(同19位)と対戦した。なでしこは、前半29分、PKを獲得。主将のMF宮間あやが落ち着いて決めて先制する。後半は追加点を奪えず、相手の反撃にゴールを脅かされる場面もあったが、1点を守り切った。

 澤、スタメンで代表200試合出場(バンクーバー)
日本女子代表 1−0 スイス女子代表
【得点】
[日本] 宮間あや(29分)
 苦しみながらも第一目標である勝ち点3を手にした。
「スイス戦の戦いが、その後のW杯の指標になる」と初戦を重視してきた佐々木則夫監督は、スタメンに代表200試合目となるMF澤穂希をボランチで起用。同じく150試合目となる宮間らが順当に名を連ねた。右サイドバックには初出場のDF有吉佐織、GKには187センチの長身・山根恵里奈が起用された。

 互いに出方をうかがい、一進一退の立ち上がりの中、先に決定機を迎えたのはなでしこだ。18分、センターバックの岩清水梓が右サイドへ大きく展開。駆け上がった有吉が中へ切りこんでグラウンダーのクロスを上げる。だが、ゴール前のFW大儀見優季にうまく渡らず、ボールが流れ、チャンスを逃す。

 このあたりから、試合は徐々になでしこペース。そんな26分、バイタルエリアでボールを持った宇津木瑠美が前線へフワリと浮かせてパスを供給。抜け出したMF安藤梢がこれをシュートに持ち込もうとしたが、相手GKに倒されてPKを得る。安藤は倒れた際に左足首を負傷し、途中交代となった。

 キッカーは宮間だ。「体を張ったプレーだったので、決めなくてはいけないと思った」と重圧のかかる場面ながら、右足でゴール左隅に沈める。1−0。なでしこが待望の先制点をあげた。

 その後も、宮間、大野と両サイドハーフが何度もクロスをあげ、なでしこは攻勢をみせる。前半終了間際、スイスのFWバッハマンが左サイドからひとりで切りこんで、ミドルシュートを放つが、枠外に逸れ、1点リードで試合を折り返す。

 後半に入っても、立ち上がりの5分には、縦パスに飛び出した途中出場のFW菅澤優衣香が右足を振り抜き、相手ゴールを脅かす。しかし、徐々にスイスがサイドを高く保ち、主導権を握り始める。

 10分には、バッハマンがハーフウェーラインから岩清水、DF熊谷紗希らを抜き去り、GKと1対1の状況をつくる。バッハマンはたびたび鋭いドリブルで日本の守りを突破し、冷や汗をかかせた。

 流れを変えたいなでしこは、23分に左サイドの宇津木からゴール前の菅沢に渡り、振り向きざまにシュート。だが、ボールはポストに嫌われ、追加点を奪えない。

 1−0のまま、試合は残り15分。なでしこはスイスの猛攻に防戦を余儀なくされる。30分には右CKをジャンプした山根がキャッチできずにボールがこぼれ、ヒヤリとさせられる。34分には右サイドからバッハマンにDFラインの裏をとられ、サイドネットを揺らされた。

「もう少し日本らしく落ち着いてボール動かしていければよかった」と佐々木監督が指摘したように、なでしこは選手同士の距離が間延びし、ボールを保持しても、すぐに奪い返される。「もうちょっとディフェンスからのフィードだったりができたら良かった」と有吉もリードした展開での試合運びを反省点にあげた。

 ロスタイムにはバッハマンをフリーにしてしまい、相手ロングフィードのクリアを拾われ、右足を振り抜かれる。ボールはわずかにバーの上を通過。試合終盤はスイスに押しこまれる時間帯がほとんどだったが、何とか勝利のホイッスルを聞いた。

 試合後、山根が「ホッとした」と明かしたように、まずは大事な初戦で白星を得たことは大きい。主将の宮間は「課題はありましたが、次につなげていきたい」と次戦を見据えた。13日の対戦相手カメルーンは、初戦でエクアドルに6−0と快勝し、波に乗っている。
「非常にいいチーム。心してチーム一丸で戦っていきたい」
 いよいよ始まった連覇へのチャレンジ。指揮官は勝って兜の緒を締めた。