プロ野球の開幕を前に、2016年に覚せい剤取締法違反などの罪で逮捕され、有罪判決を受けた清原和博の執行猶予が満了した。

 

 

 清原はスポニチ(6月16日付け)のインタビューに「悪いことをしているわけじゃないんですけど、(刑の言い渡し効力が)消える間際にまた踏み込まれるんじゃないかという恐怖もありました」と語っている。

 

 執行猶予満了前に『薬物依存症』(文藝春秋)というタイトルの本も出版した。

 

 クスリは一度やったらやめられない、と聞くが、清原の生々しい告白の前に胸が痛くなった。

 

<覚せい剤を使うと脳から神経に快感を与える物質が大量に出ます。そうすると、脳はその快感を覚えてしまう。これは心とは別の問題なんです。

 

 いくら自分の心の中で「あと1回だけだから、もうやらない」と思っていても脳から命令が出れば体は逆らえない。そしてまた使う。>(同書)

 

 清原は、これを蟻地獄と表現していた。一度、落ちてしまうと自力で這い上がることは不可能なのだと。

 

 また清原は「うつ病」を患っていることもカミングアウトしていた。

 

 うつ病の重さは、体内に入れた薬物の量に比例するという。医師によると、清原が使っていた覚せい剤の量は<完全に閉鎖病棟に入っていてもおかしくないレベル>(同書)。もはや、これは時間をかけて治すしかあるまい。

 

 薬物犯罪により社会的信用を失った清原にも、希望はある。それは高校野球の監督だ。

 

 甲子園記録となる通算13本塁打。清原の原点は、今も甲子園にある。

 

 

 西武で1年目に記録した31本塁打。これも高卒のルーキー記録だ。10代の清原は輝いていた。

 

 金属から木製にバットが変わったにも関わらず、清原は全くハンデを感じさせなかった。それを踏まえて、こう述べる。

 

<金属でも木製でも変わらないバッティングの基本を少年野球から教えていかないとスター選手は生まれてこない>(同書)。その通りだ。

 

<それを伝えるのは自分の役割ではないかと勝手に思っているんです。ぼくはほんとうに何の違和感もなく金属バットから木のバットに順応できましたから。>(同書)。

 

 そこを聞きたい。そのための理論や練習方法を誰よりも知悉しているのが清原である。

 

 そして、それを清原が伝えることはプロを目指す高校生のみならず、プロ野球にとっても有益である。いずれにしても、このまま埋もらせてしまうには惜しい人材だ。

 

<この原稿は『週刊漫画ゴラク』2020年7月17日号に掲載されたものです>

 


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