加藤大貴(ePARA実行委員会代表)<後編>「オンラインで広がる可能性」

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伊藤数子: 5月31日に開催されたePARA第2回大会はすべてオンラインで実施したそうですね。協賛社を探す際、企業へのアプローチもオンラインで行ったのでしょうか?

加藤大貴: はい。普段、17時まで品川区社会福祉協議会で働いていることもあり、スポンサー集めの時間をつくるのは大変です。昨年は有給休暇を使い、その日に複数社を回りました。今回は新型コロナウイルス感染拡大の影響もあり、企業に直接出向くことが難しくなりました。“しょうがないから、オンラインで打ち合わせをやりましょうか”と各社が受け入れてくださったので、私としては昨年以上の企業にアプローチできました。

 

二宮清純: 第1回大会はカラオケボックスでのオフライン開催でしたが、オンライン開催となれば会場費がかかりませんね。

加藤: そうですね。会場費以外にも地方から来る参加者の移動支援費などが必要なくなりました。コロナの影響を受け、オフライン大会が開催できず、気落ちしたこともありました。しかし、このような状況下でも第2回大会を開催することができたことで、“オンラインでもやっていける”と自信につながりました。

 

二宮: 参加者からの反響は?

加藤: 大会後に選手とスタッフで、オンライン打ち上げをやりました。その打ち上げの席で聴覚障がいのある人が「障がい者には対等なルールで戦う機会がほとんどなかった。だから、このePARA大会はものすごく価値があるんだ」と手話交じりに伝えてくれた。これはすごくうれしかったです。他にも2カ月間、1日4時間トレーニングをしたという方もいました。参加者にとって目標となるイベントになってきたんだ、と気付かされました。

 

伊藤: 第1回大会を踏まえ、今回変更した点はありますか?

加藤: 今回は大会前日に企業交流戦を行いました。第1回大会後、企業の人事担当者からいただいた「次は企業に所属する障がいのある同僚と一緒に出場できる大会があるとうれしい」というリクエストがきっかけです。企業交流戦までの期間、チーム練習はオンラインで行っていたそうです。それによって社内でのコミュニケーションが円滑化できたとの報告もいただいたので、企業交流戦は今後も続けていきたいと思っています。

 

 発展途上のeスポーツ

 

二宮: 中学生男子の「将来なりたい職業ランキング」でプロeスポーツプレイヤーは2位に入ったという調査結果も出ています。eスポーツ自体の人気も年々高まっていますね。

加藤: そうですね。最近ではテニスの錦織圭選手や大坂なおみ選手がeスポーツで対戦したことも話題になりました。テニスのみならずF1レーサーやNBA、メジャーリーグの選手たちもeスポーツに参加しています。eスポーツがコロナの影響で中止となった大会の代替イベントになったことで、更なる可能性を示していると思います。

 

二宮: リアルとバーチャルの融合ですね。新しいものを生み出すような期待感があります。

加藤: 私もそう思います。集う場所はリアルな空間でなくてもいい。eスポーツには対戦相手が遠く離れていても実施できる強みがあります。国境を越えて繋がれるのも魅力。素晴らしい世界だと思います。

 

二宮: ePARAでは大会運営だけでなく障がい者eスポーツに関するニュースサイトも運営しています。

加藤: サイトでは大会やイベント情報のほかに、障がいのある人が書いた記事も掲載しています。発達障がい、聴覚障がいのある人にレポートを書いてもらっていますが、全盲の方にもお願いしようと思っています。聞くと「サウンドデザインが優れている格闘ゲームであれば、対戦相手との距離感もわかるし、見えなくてもプレイ可能だ」と言うんです。その方のレポートを読んだ障がいのある人が、“自分もeスポーツをやってみようかな”と思うきっかけになるかもしれない。サイトではいろいろな可能性を模索していきたいです。

 

伊藤: それは素晴らしいですね。ePARAの今後の構想は?

加藤: 我々のコミュニティをもっと広げるためにYouTubeチャンネルを使いながら、視聴者参加型の取り組みをやっていこうと考えています。あとは秋に就職セミナーとeスポーツを混ぜたようなイベントをやろうと。先日ニュースで9割の企業がオンラインで就職希望者と面接を行い、2割は一度も会わずに内定を出す、と言っていました。今後はリモートワークを認める企業が増えていくと思うので、オンラインとeスポーツで相乗効果を生み出せると期待しています。こういうコロナ禍の状況だからこそ、eスポーツの可能性をもっと知ってもらえるチャンスだと思っています。我々もコミュニティを広げ、障がいの有無やeスポーツとスポーツ、それぞれの垣根を取り払えるよう頑張ります。

 

(おわり)

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加藤大貴(かとう・だいき)プロフィール

ePARA実行委員会代表。1981年7月12日、愛知県出身。中央大学法学部を卒業後、法政大学法科大学院を修了した。2011年11月、東京地方裁判所に入所。事務官、書記官を経て、2019年3月に退職。同年4月に品川区社会福祉協議会に入職。品川成年後見センターの職員として勤務する。9月にeスポーツを通じた障がい者雇用の促進を目的とするePARA実行委員会を設立した。11月に「ePARA2019」を開催。大会に参加した4人の就職が実現した。今年5月には「ePARA2020」をオンラインで開催。得意なゲームは「レジェンド・オブ・ルーンテラ」。

 

>>ePARA HP

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NPO法人STAND代表の伊藤数子さんと二宮清純が探る新たなスポーツの地平線にご期待ください。

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