FIFA女子ワールドカップカナダ大会は日本時間24日、決勝トーナメント1回戦でなでしこジャパン(日本女子代表、FIFAランキング4位)が、オランダ女子代表(同12位)と対戦した。なでしこは前半10分、DF有吉佐織の代表初ゴールで先制する。その後もなでしこはパスがつながり、攻勢をみせる。後半33分にはMF阪口夢穂がミドルシュートを決め、待望の追加点。後半ロスタイムに1点を返されたものの、1点差で逃げ切り、ベスト8入りを果たした。なでしこは28日にオーストラリア女子代表(ランキング10位)と準々決勝を戦う。

 連係改善、攻撃面で光明(バンクーバー)
日本女子代表 2−1 オランダ女子代表
【得点】
[日本] 有吉佐織(10分)、阪口夢穂(78分)
[オランダ] バン・デ・ヴェン(90+2分)
「スミマセン。最後、いつもハラハラドキドキさせてしまって……」
 グループリーグから4試合連続の1点差勝利。佐々木則夫監督は試合を苦笑いしながら振り返った。

 だが、実際にヒヤヒヤしたのは1点差に詰め寄られたラストの時間帯のみ。グループリーグ最終戦から1週間、「ひとつひとつ上がってきている」と指揮官も認めた通り、なでしこたちの連係は明らかに良くなっていた。

 10分、MF宮間あや、FW大野忍の素早いパス交換で右サイドから攻め入ると、クロスに大儀見のヘッドがバーを叩く。相手DFのクリアも小さく、左サイドから上がった有吉の目の前にボールは転がってきた。

「最初だったので思い切り、打っていこうと思った」
 右足を鋭く振り抜くと、グラウンダーのシュートがゴールネットを揺らす。負けたら終わりのトーナメントで、いい時間帯に先取点が生まれた。

「早い時間で先制点とって、イニシアチブをとって戦いができた」
 FW大儀見優季が語ったように、先行したなでしこは勢いづく。21分には、川澄奈穂美のクロスに、宮間がPA内に侵入してシュート。続く22分には宮間から左サイドのDF鮫島彩、中央の大野とつないで再び鮫島へ。鮫島のシュートはバーを越えたが、相手の守りを完全に崩した。

「今日は距離感も良くてワンタッチ、ツータッチで動いていた」と先制弾の有吉が指摘した通り、この試合のなでしこはボールがよくつながった。24分にも阪口、大野、川澄とワンタッチパスでシュートまで持ち込むなど、速攻でチャンスを演出する。

 1点リードのまま突入した後半も、9分には宮間が中央から斜めにドリブルで切りこみ、右サイドの川澄へ。川澄の大儀見へのクロスはDFに当たったものの、相手ゴールを脅かす。その後も前がかりになって反撃を試みるオランダに対し、DFラインの裏をとる動きをみせ、あわよくば追加点というシーンを何度もつくった。

 それでも徐々にオランダに押しこまれ、残り15分前後から苦しい時間帯を迎える。後半31分には相手のコーナーキックを鮫島がクリアしたボールがゴールへ。危うくオウンゴールとなるところをGK海堀あゆみがパンチングで逃れた。

「なんとか1点獲りたい」
 なでしこに2点目が生まれたのは、ボランチの阪口もそう願っていたタイミングだ。後半33分、敵陣でボールを奪い、途中出場のFW岩淵真奈から大儀見へ縦パスを供給。大儀見が左サイドを上がった宮間へボールを預け、折り返す。これを岩淵がスルーしてフリーの阪口へ。左足でのミドルシュートがゴールに突き刺さった。

 これで2−0。勝利が見えたかに思えたなでしこだったが、終了間際、試合は風雲急を告げる。ロスタイム、右サイドからのクロスに、FWキルステン・バン・デ・ヴェンが頭で合わせた。GK海堀がこのボールをキャッチできず、ゴールに吸い込まれる。

 2−1、1点差。意気上がるオランダはさらに、右サイドのクロスをゴール前に送り、FWヴィヴィアン・ミディマがボレー。DFに当たったこぼれ球を、さらに詰める。これはGK海堀が身を呈してセーブし、何とか試合終了のホイッスルを聞いた。
 
「どちらの得点もサイドを起点に中で結果残すことできた。ピンチも多いので見直してやっていきたい」
 主将の宮間は引き締まった表情でベスト8を決めた試合を総括した。

 準々決勝で激突するのは同じアジア勢のオーストラリア。1回戦では強豪ブラジルを1−0で撃破し、波に乗っている。「お互い手の内を知り尽くしている相手。気持ちが強い方が勝つ」とキャプテンは決意を言葉に込めた。