FIFA女子ワールドカップカナダ大会は日本時間28日、決勝トーナメント準々決勝でなでしこジャパン(日本女子代表、FIFAランキング4位)が、オーストラリア女子代表(同10位)と対戦した。なでしこは前半、攻勢をみせるもスコアレスで折り返す。後半もチャンスがありながら得点をあげられなかったが、42分にCKから最後は途中出場の岩渕真奈が押しこみ、決勝点を決める。ベスト4入りを果たしたなでしこは7月2日にイングランド女子代表(ランキング6位)と決勝進出をかけて戦う。

 “切り札”が殊勲弾(エドモントン)
日本女子代表 1−0 オーストラリア女子代表
【得点】
[日本] 岩淵真奈(87分)
 均衡を破ったのは、なでしこの最終兵器だった。
 後半41分、途中出場の岩渕がPA内に得意のドリブルで持ち込み、左足を振り抜く。相手DFに当たってCKを獲得。宮間のキックがこぼれたところをMF宇津木瑠美が蹴り込み、ゴール前のDF岩清水梓へ。岩清水が倒れこみながら、左サイドに詰めていた岩渕へボールを渡した。

 背番号16の岩渕が右足で押しこむと、ボールはゴールネットへ吸い込まれる。待望の1点がなでしこに刻まれた。
「もう時間がない。とにかく点が欲しかった」
 殊勲の22歳は小躍りして喜びを表現した。

「ドリブルもある。初速も速い」
 佐々木則夫監督にとっては、相手が疲れてきたところで投入する、とっておきの切り札だった。国内の最終合宿では右ヒザを負傷。テーピングが痛々しいが、グループリーグの最終戦で復帰し、勝負どころでの仕事を求められていた。

 この日も残り15分を切っての投入。「大事なところで決められる選手になりたい」と語っていた通りの働きぶりに、指揮官も「混戦の中で決めていただいてよかった」と敬語を使って、ヒロインを称えた。

 気温が30度を超える消耗戦、試合のリズムをつかんでいたのはなでしこだった。「相手のプレッシャーが弱かったので、自分たちのサッカーができた」と佐々木監督が振り返ったように、立ち上がりからボールを支配し、チャンスをつくる。

 22分にはMF川澄奈穂美がハーフライン付近でボールを奪い、前線の大儀見優季に預けて、右サイドを駆け上がる。大儀見が再び川澄にパスを送り、ゴール前のFW大野忍へ。大野の左足シュートはわずかに枠の左へ外れた。

 さらに33分はMF阪口夢穂から大野へ縦パスが入る。後ろから上がってきたフリーの宮間に戻すと、思いきったロングシュート。相手GKが必死のパンチングでかきだし、得点にはならなかったが、好機を何度もつくって、試合を折り返す。

「90分、もしくは120分かかっても、自分たちのサッカーすればいける」
 佐々木監督が選手たちを鼓舞して送りだした後半も、なでしこは惜しい場面を迎える。14分、大野がドリブルで仕掛け、右サイドの川澄へ。上がってきた右サイドバックの有吉佐織がクロスを入れ、宮間がゴール前に飛び込む。ヒールでのシュートはサイドネットに当たり、得点ならず。ただ、宮間は「チャンスが増えてきた。なんとなく入る気がしていた」と得点への手応えを感じていた。

 準決勝も中3日で迎えるだけに、体力回復の面でも90分で白星を手にしたことは大きい。守備でも体格で上回る相手にしっかり体を寄せ、集中力を切らさなかった。指揮官は「よく選手が頑張ってボールを動かしながら、粘り強く最後は仕留めていただいた」と、なでしこらしい勝利であることを強調した。

 準決勝で激突するイングランドは前回大会でもグループリーグで唯一、敗れている。「ここまで来たら、今日のような試合になると思う」と主将の宮間は1点を巡る攻防になると予想する。なでしこは、グループリーグからすべて1点差を勝ち抜いてきた。厳しい戦いを制する中で徐々にチームとしての完成度が上がりつつある。

「まずは、なんとかファイナルへ」
 そう語る指揮官の下、なでしこが連覇へ、あと2勝と迫った。