「ついに、愛媛のスタジアムへサポーター達が帰ってきた!」

 

 

 

 

 

 

 

 J2再開後、第2節、3節とリモートマッチ(無観客試合)が続いていたが、第4節からは超厳戒態勢の中有観客試合が再スタートとなった。

 

 私たちの故郷、愛媛でも7月15日(水)の愛媛FCのホームゲーム(第5節)から(制限付)有観客試合が開始された。

 

 2月に行われた第1節のホームゲーム以来、約5カ月振りに訪れるニンジニアスタジアム。ストーブリーグ(オフシーズン)よりも長い間、(会場で)試合が観られなかったことは、22年間の愛媛FCサポーター人生において初めての経験であり、この日、再びスタジアムで生の試合を観戦できることを本当に嬉しく感じる。

 

 現況、スタジアムでの観戦には、Jリーグが定める「新型コロナウイルス感染症対応ガイドライン」に基づき、様々な制限やルールが設けられている。

 

 主にはマスクの着用や入場時の検温や手指の消毒、常に社会的距離を確保することなどが挙げられる。また、試合中は座席を移動しないこと。歌うなどの声を出しての応援、指笛を吹くことなどはできない。太鼓などの鳴り物や手拍子での応援、タオルマフラーやフラッグを振ったり回したりすることも禁止ということになっている。

 

 一方でタオルマフラーやゲートフラッグを掲げる行為は可能。また、試合中の拍手は許されるとのことである。

『手拍子はダメで、拍手は良いの?』

 正直、違いがよく理解できないが、定められている以上、ルールやエチケットは守りたいと思う。

 

 リーグ戦再開後、禁止されていたサポーターによる横断幕の掲出だが、有難いことに今節のホームゲームから掲出ができることになった。

 

 ということで、試合開始4時間前にはスタジアムに横断幕を運び込み、久しぶりにゴール裏スタンドに設置した。声を出して応援することはできないが、スタジアムの一角をオレンジ色に染め、横断幕を通して選手たちに応援する気持ちを伝えたい。

 

 横断幕の設置を終えた後、通常であれば(愛媛FC)選手バス到着時にサポーターによる「入り待ち」を行っているのだが、今回のホームゲームにおいては、それも禁止とされていた。

 

 この日は、超厳戒態勢にて開催される有観客試合。やはり、スタジアムやその周辺は、いつもの賑やかなホームゲームとは少し変わった雰囲気だった。スタジアム外周には、普段通りグッズ販売のブースやエコステーションなどは設置されているものの、スタジアムグルメを楽しめる「オ~レカフェ」や「ファンクラブブース」、子供たちが楽しく時間を過ごせる「柑太パーク」や「イベントステージ」などは設営されておらず、いささか寂しさを感じるものだった。

 

 開場時間が迫ると、徐々にマスク姿の愛媛サポーターがスタジアム入場口へと集まり始める。サポーター同士、久しぶりの再会に笑顔で挨拶を繰り返す。

「皆さん、お元気そうでなにより!」

 ニンジニアスタジアムにて、元気な姿で再会できた喜びを分かち合うひと時であった。

 

 来場者の入場が始まると各自、運営側の指示通り、間隔を空けてスタンドの座席へと着席した。特別、混乱やトラブルはなく、個々がルールを守って行動しているように感じられた。

 

 時計が午後7時を廻り、辺りが夕闇に包まれる中、試合がスタートした。キックオフの笛と同時に、試合(生観戦)を待ちわびたサポーターから大きな拍手が沸き起こった。目の前で繰り広げられているのは、紛れもなく真剣勝負なのだが、両クラブのサポーターによる、いつもの応援合戦はなく、選手同士の声やベンチからの指示がピッチに響き渡り、まるで練習試合を見つめているかのような独特の雰囲気。

 

 試合の局面や選手たちの好プレーには拍手が送られたり、スタンドの所々からは歓声や数名程だと思うが大きな声も聞こえてくる。残念なことだが、いつも応援の声や音に掻き消されているであろう心無い野次も、この日はクリアに耳に飛び込んできた。

 

 結局、試合は0-1で愛媛FCの敗戦となった。普段、声を出したり、太鼓で扇動したり、フラッグを振ったりして、全力で応援活動をしている立場だからだと思うが、選手たちに対し、こちらから何もしてあげられないという歯痒さもあり、ストレスを感じる一戦でもあった。

 

 試合終了後、選手たちが距離を保ちつつ、スタンド前まで挨拶に来てくれた際には、サポーターからは温かい労いの拍手が送られていた。

 

 来場者が家路を急ぐ中、今回も会場に残り、ホームゲームボランティアとして、運営スタッフと共にテントや備品の撤収作業を行った。マスクをしながらの作業は途中、息苦しくなったり、発汗も激しくなったりすることもあった。作業は1時間程で終了したが、正直いつもよりも疲労を感じた。

 

 これからの季節、益々気温が上昇することが予想される。マスクを着用しての作業や活動には、気を付けたいと思う。

 

 リーグ戦再開後、ホームで初めて行われた有観客試合。様々な制限が設けられ、来場者側も慣れない中、環境的にも準備の面でも充分とは言えない状況ではあったが、事務局スタッフやチーム関係者の努力もあり、この時節に(観客を集めて)スポーツイベントを開催できたことは、地域にとって本当に価値のあることだと思う。

 

 今は、まだ制限もあり大勢のお客様を迎えることは難しい局面ではあるが、地域のプロスポーツ文化を絶やさないためにも、勇気を持って大いなる一歩を踏み出すことができたのではないだろうか。

 

<松本 晋司(まつもと しんじ)プロフィール>

1967年5月14日、愛媛県松山市出身。愛媛FCサポーターズクラブ「Laranja Torcida(ラランジャ・トルシーダ)」代表。2000年2月6日発足の初代愛媛FCサポーター組織創設メンバーであり、愛媛FCサポーターズクラブ「ARANCINO(アランチーノ)」元代表。愛媛FC協賛スポンサー企業役員。南宇和高校サッカー部や愛媛FCユースチームの全国区での活躍から石橋智之総監督の志に共感し、愛媛FCが、四国リーグに参戦していた時期より応援・支援活動を始める。

 


◎バックナンバーはこちらから