24日、2020年東京五輪・パラリンピック組織委員会は都庁前の都民広場で大会エンブレムを発表した。組織委の森喜朗会長は「大会エンブレムはシンボルとして様々な場面で使われる。大会準備に関わるすべての皆さんをまとめる旗印となります」と今後の役割に期待し、東京都の舛添要一知事は「大会後も人々に残るものであってほしい」と語った。大会エンブレムは国内外のデザイナーによる条件付き公募を実施。104作品の応募の中から審査委員会の審査を経て、アートディレクターの佐野研二郎氏の作品が選ばれ、国際オリンピック委員会(IOC)、国際パラリンピック委員会(IPC)、組織委の承認を得て決定した。
(写真:約5000人の前で初披露となった五輪<左>とパラリンピックのエンブレム)
 東京五輪開幕まで、ちょうど5年を迎え、大会のシンボルマークとなるエンブレムがお披露目された。五輪はTOKYO、TOMMOROW、TEAMの頭文字をとってTをイメージし、パラリンピックはイコール(=)をイメージしたデザインとなった。

 五輪のエンブレムの中心にある太い線は黒。すべての色が混ぜ合わせると黒になることから、ダイバーシティ(多様性)の象徴として用いられた。大きな円はインクルーシブ(包含する)な世界を、右上の赤い丸は熱い鼓動を示しているという。一方、パラリンピックのエンブレムは、白と黒の部分は五輪エンブレムを反転させた。これは五輪とパラリンピックが同じ理念であることを表している。

 審査委員代表を務めた日本グラフィックデザイナー協会の永井一正特別顧問が「ほとんどのデザイナーが参加し、水準が高かった」というコンペを勝ち抜いた佐野氏。今年の亀倉雄策賞を獲得しているデザイナーである。奇しくも冠名の亀倉氏は前回の64年大会の大会エンブレムをデザインしたグラフィックデザイナー。太陽、日の丸をイメージした大きな赤い丸というシンプルかつ力強いデザインで、その名を世界に轟かせた。今回のエンブレムにも64年のDNAは継承されている。
(写真:佐野氏は「(大会エンブレムのデザインは)夢だった。“いつかやってみたい”という思いを捨てなければ夢は叶う」と喜んだ)

 エンブレム発表の場で主催者挨拶を行った舛添知事は「招致のエンブレムは見事な役割を果たしてきた。名残惜しい思いもありますが、新しいエンブレムがオールジャパンを牽引する」と期待を寄せる。大会に向けては「ハード、心、情報のバリアフリーすべてで史上最高の大会を作り上げ、障がいのある人もない人もともに生きる社会の実現につなげていく」と誓った。
(写真:エンブレムを発表し、「新しい夜明け、第一歩となる」と力説する舛添知事)

 さらには大きく話題になっている新国立競技場の問題にも触れ、「大会準備にあたっては、様々な困難がありましたし、これからもあります。国立競技場を超える問題もあるかもしれない。我々が団結すれば、いかなる困難も乗り越えることができる。その先に大きな成功があると確信しています。新エンブレムの元、大会成功という大きな目標に向かっていきたい。日本人の力、東京都民の力を世界に示そうではありませんか」と力強い言葉で締めた。

(文・写真/杉浦泰介)