(写真:司令塔2人が抜けた今季のENEOS。宮崎<右端>のゲームメイクがカギ握る)

 18日、第22回Wリーグ(バスケットボール女子日本リーグ)が東京・大田区総合体育館で開幕し、11連覇中(昨季はプレーオフ中止などで優勝チームなし)のENEOSサンフラワーズは富士通レッドウェーブを77-60で破った。ENEOSは第1QはCF渡嘉敷来夢とG宮崎早織の活躍で28得点を奪うが、第2Qは9得点どまり。前半は1点のリードを奪われた。第3QはGF林咲希が得点を重ねるなど、逆転に成功。第4Qで突き放し、17点差で逃げ切った。昨季は黒星スタートだった開幕戦を白星で飾った。

 

 宮崎、18得点7アシスト4スティールの活躍(大田区総合体育館)

ENEOSサンフラワーズ 77-60 富士通レッドウェーブ

【第1Q】28-23【第2Q】9-15【第3Q】21-11【第4Q】19-11

 

(写真:入社7年目の宮崎。「正直不安もあった」と語ったが、チームを勝利に導いた)

 今季からJX-ENEOSからENEOSへとチーム名が変更になったサンフラワーズ。新司令塔に抜擢された宮崎が躍動した。

 

 吉田亜沙美、藤岡真菜美という日本代表にも名を連ねていたPGが昨季限りで退団。過去には2人がケガなどで抜けている時に代役を務めることはあったが、今季は宮崎が中心となってチームを牽引しなければならない。

「リュウさん(吉田亜沙美)とネオ(藤岡真菜美)さんが抜け、“宮崎じゃダメだ”と言われるのが嫌だったので、全力で頑張ってきました」

 

 この日のスターターはPG宮崎、SG林、SF宮澤夕貴、PF渡嘉敷、C梅沢カディシャ樹奈。日本代表クラスがズラリと並び、宮崎のゲームメイクに試合の命運が託された。しかし先制は富士通。SG篠崎澪に鋭いドライブからレイアップを決められた。

 

 すぐさま、ENEOSも反撃した。宮崎が切り込んでゴール下へ向かう。相手を引きつけたところでアウトサイドの渡嘉敷へパス。フリーでボールを得た渡嘉敷がジャンプシュートを決めて追いついた。

 

 その後は点の取り合いとなったが、ENEOSが突き放す。宮崎が持ち味のスピードを生かしつつ、パスでも魅せる。6-5の場面では、鋭いドライブでペイントエリア侵入。相手の注意をノールックパスで渡嘉敷の得点をアシストした。

 

 このQは2つのスリーポイントを決めるなど8得点2アシスト。10得点を挙げたエースの渡嘉敷と共にチームを引っ張った。最初の10分間は、ENEOSが28-23で5点リードして終えた。

 

(写真:篠崎は両軍最多の20得点を挙げたが「決め切れるシュートを落とした」と悔しがった)

 第2QはENEOSにとって我慢の時間帯だった。富士通15点に対し、わずか9点。「我慢する場面でミスが出てしまった」と宮崎。第1Qのリードは吐き出し、1点のビハインドでハーフタイムを迎えた。

 

 第3QになるとENEOSが息を吹き返す。渡嘉敷がインサイドで強さを発揮し、6得点を挙げれば、林が速攻からのレイアップ2発を含む7得点を稼いだ。このQは21得点をあげ、富士通の反撃は11点に抑えた。

 

 9点差で迎えた第4Qは、渡嘉敷をベンチに下げながらもリードを広げた。宮崎の連続スリーで点差を2ケタに乗せた。ENEOSの持ち味であるアグレッシブなディフェンスで、富士通のオフェンスを封じた。ラスト4分以上、スコアを許さなかった。77-60。昨季開幕戦でシーズン唯一の黒星を喫した富士通に1年越しのリベンジを果たした。

 

 宮崎は両軍の誰よりもコートに立った。プレータイムは38分以上。チーム最多タイの18得点に加え、4スティールを記録するなど守備面でも貢献してみせた。また7アシストで司令塔としての役割を果たした。

 

 本人は「ボールを持つことが多かった」とゲームメイクの面で反省点を挙げた。

「もう少しウイングの選手にボールをさばいて、自分が触らない時間を増やした方が、テンポが良くなり、チームの流れも良くなったんじゃないかと思った。すぐにボールをもらっていってしまったのは反省しているところです」

 

(写真:渡嘉敷は16得点10リバウンドの活躍。2ブロックと攻守で存在感を見せつけた)

 今季Wリーグは新型コロナウイルス感染拡大防止策として、東西カンファレンス制を敷いた。各カンファレンス4回戦総当たり方式のため、ENEOSは富士通、シャンソン化粧品シャンソンVマジック、東京羽田ヴィッキーズ、日立ハイテククーガーズ、新潟アルビレックスBBラビッツとプレーオフ進出をかけて戦う。

 

 試合を重ねることで各チーム、対策を講じてくるはずだ。当然、司令塔の宮崎へのマークも厳しくなる。

「今までENEOSのガードはネオさんもリュウさんもパスが巧かった。自分の持ち味はスピード。点を取っていける選手になりたいと思います」

 

 昨季は新型コロナの影響でレギュラーシーズン終盤に中断、中止に追い込まれた。ENEOSは15勝1敗と圧倒的な成績を残したが、このシーズンの優勝チームはなし。リーグ12連覇は今季に持ち越しとなった。シーズンを通じて司令塔の役割が求められる宮崎。25歳の新司令官に連覇の命運は託された。

 

(文/杉浦泰介、写真/©Wリーグ)