さすが“知将”野村克也の教え子だけのことはある。野村楽天でヘッドコーチを務めていた橋上秀樹の解説は、他の解説者とは一味違う。5日、東北楽天が6対5で勝利したオリックス戦で、こんなことを言っていた。

 

 

「打率の良い順に1番から打順を組んだらどうか、と考えたことがある。打率が良ければ、それだけ多くの打席がもらえるわけだから選手のモチベーションアップにもつながる。1シーズン、どこかやってみるチームはないものか……」

 

 言われてみれば、その通り。どんな結果が出るか興味深い。

 

 というのも、打順には以下のような固定観念があるからだ。1番は出塁率が高く、足の速い選手、2番はバントなど小技が得意な選手、3番はチーム1の好打者、4番は好打とパワーを兼ね備えた強打者、5番は勝負強いクラッチヒッター――。

 

 しかし、メジャーリーグでは近年、「2番最強論」が浮上しているように、打順に対する考えは、日々更新されている。

 

 打順に対する考察を文書化したものとしては知将・三原脩が著した『三原メモ』(新潮社)が有名である。

 

 書き出しは、今の野球においても通用するどころか、不変の真理といっても過言ではない。

 

<バッティング・オーダーは、各打者が各個に、高打率を上げるように仕組まれるものをもって最上とはしない。むしろ全体的な安打数は少なくても、得点能力の大であることが望ましいことなのである>(同前)

 

 その延長線上の考察として「3番最強説」と「4番最強説」の根拠についても検証している。

 

 これは橋上も指摘していたが、1番打者だからと言って、無死無走者の場面で打席に立つことは、そう多くない。確実なのは初回だけだ。

 

 一方、4番打者だからと言って、いつもランナーを置いて打席に入るとは限らない。初回、3者凡退に終われば、2回は先頭打者として打席に立つ。

 

 いずれにせよ、重要なのは「得点能力の最大化」。実験のサンプル数は、もっと多くてもよい。

 

<この原稿は2020年9月28日・10月5日号『週刊大衆』に掲載されたものです>

 


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