皆様、約半年のご無沙汰です。振り返ればセガサミー野球部の指揮を執ることになった今季、初の公式戦である東京都企業春季大会1回戦(対東京ガス)で監督初勝利をあげ、その後、新型コロナウィルスの感染拡大の影響で各大会が中止となり、野球部の活動もストップ。社会人野球の監督が初めてなら、こんな経験も初めてということばかりが立て続けに起こりました。今は選手ともども野球ができる喜びを感じているところです。当コラムも今月から再開します。引き続き西田節にお付き合いください。

 

 重圧の下でこそ明るく

 4月、5月はステイホームで野球部の活動はなく、6月から練習を開始しました。選手個々でトレーニングは積んでいましたが、オープン戦も当初はなかなか調子が上がらず、それでも8月になってから連勝するなど上り調子に。そして9月末から今季の最大の目標である第91回都市対抗野球大会の予選(東京都二次予選)が始まりました。

 

 予選はトーナメントですが、第4代表決定まで敗者復活もある独特のシステムです。初戦(9月23日)はJR東日本と戦いました。先発の森井絃斗は6回を投げ無失点。7回までこちらはソロホームラン3本で3対0とリードしました。相手はダブルプレー5つと拙攻が多く、それに助けられた面もあり、このままいけばまさに「勝ちに不思議の勝ちあり」でしたが、8回裏、8点を奪われ5対8で敗れました。

 

 この敗戦でチームの雰囲気が重くなりましたが、2日後には第2代表決定トーナメントに突入。その初戦、REVENGE99に10対3(9月25日)で勝ち、明治安田生命に7対0(9月29日)、鷺宮製作所に7対3(9月30日)と連勝し、決勝へ。ここでNTT東日本(10月6日)と戦いましたが、1対3で敗戦。この第2代表トーナメントでは森井が明治安田生命を相手に4安打完封と良いピッチングを見せてくれました。都市対抗予選はトーナメントということで一戦一戦、重みがあるのは当たり前ですが、社会人野球は会社のために戦うという面もあるので、その重圧たるや……。「負けたら会社に行けません」と言う選手もいたくらいです。

 

 そして迎えた第3代表決定戦(10月7日)、ここで勝てば都市対抗へ、敗れれば最後の第4代表決定トーナメントへ。運命の鷺宮製作所戦、先発した草海光貴がナイスピッチングを見せてくれました。7回無失点、9奪三振。打たれたヒットはわずか4本。普段はクールな草海ですが、この試合は気合が前面に出ていました。試合前、「すごい緊張してます……」と言っていましたが、まあ野球をやっていればこういう試合で緊張するのは当たり前。それを乗り越えることで成長するので、草海もこの試合でまたひとつ大きくなったんじゃないですかね。

 

 ベンチとしては負けた場合を考え、第4代表決定戦まで頭に入れた継投をと思っていたので、その面でも草海のナイスピッチに助けられました。打者では4番の根岸晃太郎が良い働きをしてくれました。彼は第3代表決定戦までは調子が上がらなかったんですが、この一戦では、6回にチャンスを拡大するツーベースなど良いところで打ってくれました。

 

 先程、重い雰囲気の中で戦うと言いましたが、その中でいかに明るく元気にプレーするか、それが大事ですね。私もトーナメントを経験して、NPBや四国アイランドリーグplusのリーグ戦とはまた違う緊張感を味わいました。勝った負けたを積み重ねていくリーグ戦とは別物の戦いがそこにはありましたね。

 

 それにしても、今は都市対抗の切符を手に入れホッとしています。新型コロナウィルスの影響で本業が大変な中、野球をやらせてもらえるのは非常に幸せなことです。これはセガサミーに限らず、どのチームも同じでしょう。都市対抗という伝統ある大会で結果を残し、少しでも会社や地域に貢献、そして還元したいと思っています。

 

 代表決定の後、チームは3日間休みをとり、その後、オープン戦を戦っています。途中、秋季企業大会もあるので約1カ月、良い形で本戦を迎えたいものです。

 

 さて最後に。当コラム休載中に元PL学園野球部監督の恩師・山本泰さんの訃報が届きました(8月11日、腹部大動脈瘤破裂のため。享年75)。今年1月、セガサミーの監督を引き受けた際に、「頑張れよ。そのうち食事でも行こう」と言われていたのですが、約束が果たせないままとなりました。突然の訃報にただ驚くばかりです。

 

 PL学園(大阪)時代、ヤンチャだった私を信頼してくださり、ときには厳しく、そして思いやりを持って接してくださいました。78年夏の甲子園、PLが初優勝を果たしたときのことです。甲子園に校歌が流れたとき、山本監督が泣いていたのを今も覚えています。それを見て「勝つということ本当に大変なことなんだな」と思ったものです。そのことをNPBでも、独立リーグで監督をしたときも、いつも胸に刻んでおりました。心よりご冥福をお祈り申し上げます。

 

<このコーナーは毎月1日更新です>


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