巨人・原辰徳監督のクジ運の悪さが話題になっている。10月26日に行われたドラフト会議、巨人は近大の野手・佐藤輝明を1位で指名したが、4球団が競合した結果、阪神が交渉権を獲得した。

 

 

 これで原のクジ引きの通算成績は1勝11敗。当たりクジを引き当てたのは、福岡ソフトバンクと競合した2008年の大田泰示(現北海道日本ハム)だけだ。

 

 中日スポーツWEB版(10月26日配信)の記事によると<3球団以上の競合では9戦9敗>。クジを引いた時には、もう当たりは消えていたというケースもあるが、それを差し引いても抽選での勝負弱さは深刻だ。

 

 本人も気にしているのか、ドラフト前には縁起のいい寺を訪ねていたようだ。それでもご利益がないのは、もはやドラフトの抽選者には向いていないということだろう。

 

 だがクジ運の悪さはドラフトの失敗を意味するものではない。むしろ逆のことだってある。それを象徴するのが06年の例だ。

 

 この年のドラフトは高校生と大学生・社会人の二部制で行われた。巨人は高校生部門の1位に大型ショートの堂上直倫(愛工大名電)を指名したが、3球団が競合した末、中日に交渉権をさらわれた。

 

 そこで“ハズレ1位”として指名したのが、今では「巨人軍史上最高のショート」との評価を得ている坂本勇人(光星学院)である。

 

 堂上もそれなりに頑張ってはいるが、彼の通算安打数421本に対し、坂本は2003本。皮肉な言い方だが、原のクジ運の悪さが、巨人に“福”をもたらしたのである。

 

 私見を述べれば、原は80年のドラフトで、4球団が競合する中、藤田元司監督が当たりクジを引き当て、意中の球団である巨人入りを果たした時点で、ドラフトに関する運を使い果たしたのではないか。リーグ優勝8回、日本一3回の大監督なのだから、今さらクジ引きに参加することもあるまい。

 

<この原稿は2020年11月16日号『週刊大衆』に掲載されたものを一部再構成しました>

 


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