3月8日(土)、待ちに待ったJ2リーグ2008シーズンの開幕戦の日を迎えた。朝から晴天に恵まれた愛媛県総合運動公園。開場前、愛媛FCのホーム「ニンジニアスタジアム」には、この日を待ち望んでいた大勢のサポーターやファンが「開場はまだか?」と入場ゲート前に長蛇の列を作っていた。
(写真:FW若林学選手が相手DFと競り合う)
 開幕戦の対戦相手はロアッソ熊本。今年からJ2に参戦した新鋭クラブである。今年でJリーグ3年目を迎える愛媛FCとしては、先輩クラブとしての強さを後輩クラブへ示してほしいところだ。勝利はもちろんのこと、力の差を見せつけたい。

 天候と同様にピッチコンディションも良好。芝の緑が目に眩しい。開幕戦の準備がすべて整った午後2時、愛媛FCのキックオフで試合がスタートした。
 立ち上がり、愛媛FCは開幕戦ということで緊張しているのか、単純なパスミスから、相手にカウンター攻撃を許し、ピンチを迎えた。落ち着いていれば、十分対応できるはずだが、相手のスピーディーで直線的な攻撃に対して手を焼いている。なかなか硬さがとれないようだ。

 それでも、愛媛FCは試合開始から30分を過ぎる頃には、中盤でボールをキープし、パスを回しながら、攻撃のリズムをつかみ始めた。前半40分、相手陣内の右サイド、MF青野大介選手からオーバーラップしていたDF津田琢磨選手へパスがつながる。

 右サイドに開いて、津田選手からボールを受けたFW若林学選手が、ペナルティアーク付近でフリーとなっているFW田中俊也選手へ向け、やわらかなロビングボールでラストパスを供給する。ペナルティアークで、このボールを受けとった田中選手が、トラップを挟み、右足で強烈なシュートを放つが、惜しくもゴールマウスを捉えることはできなかった。

 しかし、素晴らしい攻撃展開にスタンドからは大きな歓声が上がった。このまま、リズムに乗って試合を進めたかったが、得点は生まれず、0−0で前半戦が終了した。

 後半立ち上がり、一進一退の攻防の中、流れは愛媛FCへ傾いていく。後半2分、敵陣右サイドを駆け上がるMF江後賢一選手からペナルティエリア内に向けて絶妙のクロスボールが供給される。ゴール前に攻め上がった田中選手が、このボールを捉え、右足でボレーシュートを放つが、これまた、ゴールポスト外側をわずかにかすめるにとどまり、先制点とはならなかった。しかし、得点への期待感が膨らむ攻撃ではあった。

(写真:敵陣での激しい攻防) 後半9分、ついに歓喜の瞬間がやって来た。青野選手が敵陣右サイドからドリブルでペナルティエリア内にボールを持ち込む。相手DFに足を掛けられ、足元からボールが離れて転がるが、MF赤井秀一選手がすかさず、このボールを拾って再度、ペナルティエリアの深い位置まで攻め込んだ。

 エリア内ファーサイドに陣取る田中選手に向けて、センタリングを供給する赤井選手。このボールを右足で確実に捉えた田中選手が、弾丸シュートを相手ゴールに蹴り込み、見事、先制点を奪取した。2008シーズン愛媛FCの初得点を、期待のエース・田中選手が決めた意味は大きい。

 大興奮のスタンド。歓声が鳴り止まない。田中選手は、サポーターたちの前で拳を突き上げ、ガッツポーズを繰り返す。歓喜の「トシヤ」コールを連呼するサポーター。

 まだまだ、興奮は続く。後半18分、自陣DFラインからのロングフィードに追い着いた左サイドの江後選手が、ペナルティエリア内までドリブルでボールを持ち込み、フリーの田中選手にラストパスを供給。田中選手がシュート体勢に入るが、相手DFからスライディングを受け、ボールがマイナス方向へと転がった。

 そこに攻め上がってきたのが青野選手。ワントラップでボールを足元に収め、左足を豪快に振り抜くと、ボールは相手GKが伸ばした手の上を擦り抜け、見事、ゴールネットを揺らした。素晴らしい追加点だ。選手たちが、青野選手に駆け寄り、手荒な祝福を浴びせる。スタジアムに歓喜の輪が広がっていく。

 その後、一瞬の隙を突かれ、失点を喫するが、後半は、ほぼ愛媛がペースを握り続け、試合終了。愛媛FCが2−1で2008シーズンの開幕戦を制した。立ち上がり、熊本の果敢な攻めに慌てさせられたが、キープ力と展開力に優る愛媛FCが、終盤に勝利を引き寄せた形だ。

 2008シーズン、素晴らしいスタートを切ったが、現状に満足していてはいけない。チーム力をもっと高め、今後のライバルとの対決でも、しっかりと結果を残して欲しい。

松本 晋司(まつもと しんじ)プロフィール
1967年5月14日生まれ、愛媛県松山市出身。
愛媛FCサポーターズクラブ「Laranja Torcida(ラランジャ・トルシーダ)」代表。2000年2月6日発足の初代愛媛FCサポーター組織創設メンバーであり、愛媛FCサポーターズクラブ「ARANCINO(アランチーノ)」元代表。愛媛FC協賛スポンサー企業役員。南宇和高校サッカー部や愛媛FCユースチームの全国区での活躍から石橋智之総監督の志に共感し、愛媛FCが、四国リーグに参戦していた時期より応援・支援活動を始める。
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