コロナで揺れたJリーグも、いよいよ大詰めだ。11月11日現在、J1川崎フロンターレは22勝2分け2敗で勝ち点68の首位。2位ガンバ大阪に勝ち点で13の差をつけている。2年ぶり3度目のリーグ優勝は、ほぼ決まりだろう。

 

 

 今季は12連勝を1回、10連勝も1回記録している。これまでのJ1同一シーズン連勝記録はG大阪(1997年と18年)と鹿島アントラーズ(18年)の9。1シーズンで2度の2ケタ連勝が川崎Fの規格外の強さを裏付けている。

 

 昨シーズンと比べ、どこが変わったのか。まずはシステムだ。これまで慣れ親しんだ「4-2-3-1」から「4-3-3」に変更した。

 

 ディフェンスラインから最前線までの距離は約30メートル。タテのサイズをコンパクトにしたことで、選手の密集度がより高まった。相手にボールが渡ると、ピラニアのようにくらいつき、ボールを奪いにかかる。マイボールにするとサイドアタッカーの出番だ。

 

 ルーキーの左ウイング三笘薫の活躍が光る。これまでリーグ戦22試合に出場し、11得点。第9節から11節にかけてリーグ戦3試合連続、カップ戦も含めると公式戦5試合連続得点を記録した。

 

 監督の鬼木達は「推進力があり、一気にボールをゴール前まで運んでくれる」と全幅の信頼を寄せる。

 

「Jリーグの左サイドで一番輝いている選手」

 

 こう語るのは元日本代表MF岩本輝雄だ。

「左サイドからカットインして右足で精度の高いシュートを打つことができる。チャンスをつくるのも巧い。またタテへの動きが速いから、ショートカウンター、ロングカウンターのどちらにも対応することができる。相手にとっては脅威でしょう」

 

 守る方はどうか。元日本代表DF名良橋晃にも話を聞いた。

「彼のドリブルのリズムは独特だから相手DFは足を出しづらい。ペナルティーエリア内で中途半端に足を出せばPKをとられかねない。厄介な選手ですよ」

 

 元々、川崎Fの下部組織で育った選手だ。テクニックには定評があり、高校3年時に“狭き門”をくぐってトップチームから招待状が届いた。

 

 ところが三笘は、この魅力的なオファーを断り、誘いを受けていた関東大学2部リーグの筑波大学へ。本人は「プロでやる自信がなかった」と語っているが、これは謙遜だろう。大学2年時にはユニバーシアード日本代表に選ばれるなど、順調に成長を遂げた。

 

 私が初めて彼を見たのは大学2年時の天皇杯でのベガルタ仙台戦。結論から言えば三笘の2ゴールで仙台を撃破したのだが、自陣左サイドからドリブルで駆け上がり右足で奪った1点目は、20歳のポテンシャルを余すところなく示すものだった。

 

 三笘が見据えるのは、来年7月に開幕する東京オリンピックだ。U-23日本代表ではMF久保建英(ビジャレアル)、MF堂安律(ビーレフェルト)らとのレギュラー争いが待っている。本人は「(森保一代表監督には)“自分もいるんだぞ”と数字を残してアピールしたい」と抱負を口にしている。

 

<この原稿は『サンデー毎日』2020年11月29日号に掲載されたものです>

 


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