広島東洋カープの前田智徳外野手が１日、本拠地の広島市民球場で行われた中日ドラゴンズ戦の第５打席でライトにタイムリーを放ち、通算2000本安打を記録した。史上36人目、カープでは05年の野村謙二郎以来４人目の達成となる。
▼携帯サイト「二宮清純.com」にてボイスコラム「前田智徳、狂気の伝説」を配信！ 大入り満員の市民球場のスタンドに優勝したかのようなウエーブが巻き起こった。プロ入り18年目、天才と呼ばれた男らしい鋭い打球がライトの右を襲った。７回に併殺打に倒れ、この日、４打数無安打。記録達成は翌日以降に持ち越しかと思われた矢先の出来事だった。
８回、カープは打者一巡の猛攻で９−７と逆転に成功。ナインがつないでつくったチャンスに前田は見事に応えた。中日の６番手・久本祐一がカウント０−２から投じた３球目。歯を食いしばってバットを振りぬく。ヒットを確信し、ポーンと軽く手を叩いてファーストベースに到達した。派手なガッツポーズなどはなかったが、その目は心なしか潤んでいた。
前田は熊本工からドラフト４位で90年にカープに入団。ルーキー時より天性の打撃センスを発揮し、同年６月のヤクルト戦で初出場初安打をマークした。３年目の92年に初めて打率を３割に乗せる（.308）と、94年にはパウエル（中日）と首位打者を争い、リーグを代表する左打者に躍り出た。
イチローも憧れたという天才打者の野球人生が暗転したのは95年。５月のヤクルト戦で右足のアキレス腱を断裂し、残りのシーズンを棒に振った。その後も故障に悩まされ、フル出場できない年が続く。
「前田智徳という打者はもう死にました」
本人からは衝撃的な発言も飛び出した。それでもほぼ毎年、打率３割を超える好打率を残し、三振数は04年から常に規定打席数以上の打者では最小を誇る。１日現在のプロ通算成績は1894試合、6585打数2000安打、打率.304、286本塁打、1009打点。磨き上げられた打撃技術はまだまだ衰え知らずだ。
ケガさえなければ、イチローよりも先に海を渡っていたかもしれない。しかし、アキレス腱を断裂してからの“第２の野球人生”で1400本近くの安打を重ねた。日本球界が誇るラストサムライ。その孤高の姿に今日、再びスポットライトが当たった。
なお試合は終盤にカープ打線が大爆発。14−７で中日を破り、カープがメモリアルゲームを白星で飾った。
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前田智徳、記録達成の声 みんながすごい試合をしてくれた。そのことにまずびっくりしている。みんなが最高の形でまわしてくれた。ここで打たないわけにはいかない、打てるシチュエーションはできているなと思って打ちました。
自分個人のことで騒がれるのは残念なこと。ここまでのチームの戦いを考えると悔しい。（涙を流しながら）自分がいいシーズンを送っていないことに責任を感じています。ケガをして以降、チームの足を引っ張ってきました。こんな選手を応援していただいて、本当にありがとうございます。今日という日を一生忘れることはありません。
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2000本安打達成を記念して、携帯サイト「二宮清純.com」で二宮清純のとれたてボイスを配信中。その一部を公開します。
前田智徳、狂気の伝説「カープの前田選手が2000本安打を達成しました。心よりおめでとうございます。私は90年代から2000年代にかけて日本には３人の天才バッターがいると思っています。１人はマリナーズのイチロー、もう１人がヤンキースの松井、そしてカープの前田です。
この中で本当の天才を１人あげろと言われたら、私は前田の名前をあげます。なぜかと言いますと……」
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※二宮清純の前田に関する過去コラム
＞＞ 「プロ野球の時間」第246回 「2000本安打」達成日は勝利で飾りたい＞＞ 「唯我独論」第284回 前田の2000安打は敗残兵の帰還の譜＞＞ 「プロ野球の時間」第144回 満身創痍だが、天性のバッティングセンス＞＞ 「ノンフィクション・シアター・傑作選」第７回 前田智徳、打撃する心＞＞ 「唯我独論」第75回 広島新四番・新井を守る“用心棒”前田