8月24日に開幕した第78回都市対抗野球大会は4日、決勝戦を迎えた。激戦を勝ち抜き、ファイナルに進んだのは8年ぶり6回目の優勝を狙う東芝(神奈川県川崎市)と初の決勝進出を果たしたJR東日本(東京都)。果たして、黒獅子旗はどちらのチームに渡ったのか――。
 JR東日本の先発は2回戦の日本生命戦で5安打完封勝ちを収めたエース・斎藤貴志。その斎藤の立ち上がりを初回、東芝打線が攻め立てた。2四球1安打でいきなり無死満塁のチャンスを得ると、ルーキーながらも今大会3本の本塁打放っている主砲・西郷喬将が打った瞬間それとわかる満塁ホームランを放ち、東芝が4点を先制した。

 JR東日本も2回裏に1点を返し、3点差とした。しかし、東芝は5回表、再び2死満塁のチャンスを得る。ここで迎えたバッターは初回に一発を放った西郷。しかし、今度は斎藤が西郷を内野ゴロに打ち取った。ところが、JR東日本の内野陣のミスでオールセーフとなり、東芝に5点目が入った。さらに2点を追加した東芝は、7−1と大きくリードを広げた。

 もはや黒獅子旗の行方は川崎市に決定かと思われたが、JR東日本も土壇場で脅威の粘りを見せた。6点ビハインドで迎えた9回裏、まずは1死から5番・中尾敏浩のソロ本塁打で反撃の狼煙を上げると、そこから連打で1死2、3塁とし、東芝のエース・磯村秀人をマウンドからひきずりおろした。そして代わったばかりの木戸一雄の初球を5番・五十嵐卓也がライトスタンドへ運び、ついに2点差にまで詰め寄る。

 しかし、JR東日本の反撃もここまでだった。結局、そのまま東芝が7−5で競り勝ち、6回目の優勝に輝いた。

 東芝の印出順彦監督はインタビュアーから「優勝、おめでとうございます」と言われると、「どうも、ありがとうございます!」と紅く染まったスタンドに向かって帽子を高々と上げた。
 実は、8年前に優勝したその年、印出監督は現役を引退。そして監督に就任して1年目の今年、それ以来の優勝にチームを導いたのだ。

 東芝の今年のスローガンは「甦れ紅い軍団!」。38歳の若き指揮官は、スローガン通り、見事に強い東芝を甦らせた。

 ★二宮清純著『負け組の奇跡』好評発売中!★

 1年前の都市対抗では、TDK(秋田県にかほ市)が奇跡の初優勝を遂げ、東北に初めて黒獅子旗が渡りました。
 長い間、都市対抗で1勝すらできなかった彼らが、どのようにして栄冠を手に入れたのか、その一部始終を綴った完全ノンフィクション『負け組の奇跡 〜TDK野球部 栄冠への321日〜』が7月25日に発売されています。二宮清純が現地取材で見て、訊いて、感じたこと全てを集結させた超大作。どうぞ、お楽しみください。

『負け組の奇跡 〜TDK野球部 栄冠への321日〜』
序 章 廃部の危機
第1章 戦う集団
第2章 執念のサヨナラヒット
第3章 新人の成長
第4章 劇的な幕切れ
第5章 補強選手たちとの結束
第6章 一気に頂点へ
終 章 故郷の喝采

(ソフトバンククリエイティブ/定価:1,575円(税込)二宮清純著)

>> ご購入はこちら