白鵬、鶴竜の両横綱を含む19人の力士(十両以上)が休場した大相撲1月場所は、西前頭筆頭・大栄翔の初優勝(13勝2敗)で幕を閉じた。

 

 

 平幕優勝は昨年7月場所の照ノ富士以来、3場所ぶり。

 ちなみに2018年以降、平幕優勝は栃ノ心(18年1月)、朝乃山(19年5月)、徳勝龍(20年1月)、照ノ富士(20年7月)、そして今回の大栄翔(21年1月)で5例目だ。大相撲が下剋上の時代を迎えている、何よりの証左だろう。

 

 時代を遡れば、01年11月場所から、12年3月場所までの約11年間、平幕優勝は一例もない。横綱や大関など上位陣が充実していれば、そう簡単に平幕から優勝力士は出ないものなのだ。

 

 そんな中、4場所連続で欠場した白鵬、鶴竜の両横綱への風当たりが強くなってきた。白鵬、鶴竜ともに昨年11月場所後、横綱審議委員会から「引退勧告」の次に重い「注意」の決議を受けており、いわば徳俵に足がかかったような状況だ。

 にもかかわらず、たとえば鶴竜の場合、1月場所休場の理由は「腰痛」と「準備不足」。「腰痛」はともかく、「準備不足」とは何なのか。パンデミックにより、稽古が不足し、コンディションが上がってこないのはわかるが、それは鶴竜だけではない。そんな我がままを認める方も認める方である。

 

 もっとも横審にもダブルスタンダードな一面がある。8場所連続休場した稀勢の里(現荒磯親方)には「しっかりケガを治してほしい」と内規では最も軽い「激励」にとどめたのに対し、白鵬、鶴竜への「注意」はバランスを欠く、との見方もある。

「口にこそ出さないが、白鵬も鶴竜も横審には不信感を抱いている。特に白鵬には“誰が長きに渡って相撲界の屋台骨を支えたと思っているんだ”との不満が強いようだ」(相撲界関係者)

 

 いずれにしても、下剋上の時代が長く続くと、大関や横綱の権威低下を招き、ピラミッド型の相撲社会は存立基盤を揺るがされることになる。神(横綱)なき里の大相撲である。

 

<この原稿は2021年2月18日号『週刊大衆』に掲載されたものです>

 


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