ポジションこそ違うが、3度目の決勝進出で初の大学日本一に輝いた天理大のセンター、シオサイア・フィフィタに、大東文化大を初の大学日本一に導いた元日本代表ナンバーエイト、ラトゥ志南利(旧名シナリ・ラトゥ)の姿が重なる。

 

 

 早速、ラトゥに感想を求めた。

「彼に初めて会ったのが一昨年のW杯日本大会の前。僕はトンガ代表のアドバイザーをしていた。練習試合の相手がいないので、日本にいるトンガ人に依頼した。その中に天理大2年のフィフィタがいた。実は彼、僕の学校(トンガ・カレッジ)の後輩なんです」

 

 ――初めて会った際の印象は?

「大学時代の体つきが僕に似てるなって(ラトゥ185センチ、92キロ、フィフィタ187センチ、体重105キロ)。僕は大学も社会人もジャパン(日本代表)もナンバーエイトだったので、そのイメージが強いかもしれないけど、トンガ代表ではセンターをやっていたんです。足も速かった。でもフィフィタの方が僕より速いかな。それに人に強い。前に出る力もあるので、間違いなくジャパンの中心選手になれる逸材だと思いますよ」

 

 早稲田大との決勝では、圧巻のパフォーマンスを披露した。ほぼダブルスコアの55対28。フィフィタはトライこそゼロだったが、天理大の8トライのうち4つを演出した。

 

 たとえば36対14で迎えた後半18分の場面。フィフィタは敵陣でボールを持つと、力づくで突破を図った。赤黒のジャージーを3人引きつけておいて、センター市川敬太にオフロードパス。空いたスペースをタテに突破した市川は右中間に飛び込んだ。

 

 24分には敵の選手を数人引きつれてインゴール前まで前進し、同じトンガからの留学生であるロックのアシペリ・モアラのトライにつなげた。

 

 この試合、フィフィタは黒衣に徹することで、味方の選手たちの特長を、うまく引き出した。

 

 天理大の小松節夫監督のフィフィタ評。「これまで彼がトライをして喜んでいる姿を、皆さんご覧になってきたかと思います。しかし決勝はトライがゼロだった。彼が起点となってパスをつなぐいいかたちをつくることができた」

 

 卒業後はトップチャレンジリーグ(TCL)の近鉄ライナーズに入団することが決まっている。近鉄は、今季TCLで4位以内に入れば、トップリーグ16チームが待つプレーオフトーナメントにコマを進めることができる。

 

 4月17日から始まる予定のプレーオフには4月入団の新人選手も出場可。フィフィタのデビュー戦となる可能性もある。

 

 ラトゥにフィフィタの今後を占ってもらった。

「あれだけの足があればウイングもできると思う。サンウルブズでも経験しているからね。でも、やっぱり彼はセンターの方がいいね。彼の突破を警戒して相手が集まれば、外が手薄になる。それは社会人でもジャパンでも同じこと。無限の可能性を秘めている選手だね」

 

 まだ22歳。ラグビー人生は前途洋々である。

 

<この原稿は『サンデー毎日』2021年2月14日号に掲載されたものです>

 


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