「新シーズンが、いよいよ始まる!」

 

 1月21日(木)、2021シーズンに向けて愛媛FCが新体制の発表会見を行った。

 まず新監督には、昨年まで愛媛FCアカデミー部ヘッドオブコーチングとして活躍されていた和泉茂徳さんの就任が発表された。和泉さんは愛媛県南宇和郡愛南町出身で現在51歳。高校生の時には南宇和高校サッカー部(サッカーの名門校)でプレーされ、全国大会にも出場。卒業後は社会人チームでも活躍された。

 

 1994年には愛媛FCユース(U-18)の監督に就任し、当時、高校生年代での四国最強とも呼ばれていたチームを、恩師である石橋智之さんと共に創り上げた方である。

 

 1997年には愛媛FCユースを率いて第77回天皇杯全日本サッカー選手権大会に出場。1回戦ではアローズ北陸(現:カターレ富山)を破り2回戦へと進出。大人のチームへと挑んだ高校生チームが、見事勝利したということで大金星と称えられた一戦だった。

 

 次の2回戦では東京ガス(現:FC東京)と対戦。延長戦まで、もつれ込む大接戦を演じたが、惜しくも1-2で敗れた。(その後、東京ガスは、名古屋グランパスエイトや横浜マリノス、ベルマーレ平塚を破り、この天皇杯でベスト4に入った)

 

 当時、既にJ2昇格が内定していたチーム(東京ガス)を相手に、高校生チームが大健闘したということで、全国ニュースでも大きく取り上げられたことを今でも鮮明に覚えている。

 

 この天皇杯での活躍は、私が愛媛FCの応援を始めるきっかけのひとつとなる出来事でもあった。

 90年代以降もユースチームの指導や子供たちの育成、またJFAナショナルトレセンコーチなどで実績を残されている和泉さんだが今回、プロチームの監督を引き受けるのは初めての試み。それでも選手の育成能力やチーム創りに長けた和泉さんのことだから、きっと素晴らしい仕事を成し遂げてくれると私は信じている。

 和泉さんは会見にて「(今季が)厳しいシーズンになるということは覚悟のうえで、ただその中でチーム一丸となって、この難局を乗り切りたいと考えております。今シーズン頑張りますので宜しくお願い致します。」と挨拶。

 

 戦い方に関して「攻守ともアグレッシブに。守備も引いて守るよりは、出来る限り高い位置でボール奪うことを優先したい。攻撃と守備というのは相反するようで密接にリンクしていると思うので、攻撃的な守備をして、ボールを奪ってシンプルにゴールを目指すことを優先しながら戦っていきたいと思っています」とコメントを残した。

 

 また2021シーズンのチームスローガンとして「原点回帰」という言葉を掲げた。

「これまでクラブが積み上げてきたものを大切にしながら、もう一度、原点に立ち返り、直向きにボールを追う、我武者羅にゴールを目指す姿勢で魂を揺さぶるプレーをお見せしたい。そして愛媛FCに関わる全ての人々と共に未来に向かって進んで行くことで、このクラブの価値を見い出して頂き、愛媛県の象徴として愛媛FCが県全体に与える影響を、このサッカーというスポーツを通じて広めていきたい」

これら気持ちが、このスローガンには込められているという。

 新監督等の挨拶の後、会見ではトップチームのコーチに就任された實好札忠さんが紹介された。實好さんも愛媛県南宇和郡愛南町出身で南宇和高校サッカー部のOBである。大学卒業後、ガンバ大阪に入団し長年、選手として活躍。引退後は、ガンバ大阪U-23や京都サンガFC.にて監督も経験されている。和泉さんと同じく「石橋イズム」を受け継ぐ存在として、また選手や指導者としてJリーグと25年間向き合ってきた、その手腕には大いに期待したい。

 その後、会見では7人の新加入選手が紹介された。2021シーズンの新加入選手は以下の通り。
・GK(背番号37)秋元陽太選手(前所属:FC町田ゼルビア)
・DF(背番号2)浦田延尚選手(前所属:松本山雅FC)
・DF(背番号35)大谷尚輝選手(前所属:FC町田ゼルビア)
・DF(背番号39)内田健太選手(前所属:ヴァンフォーレ甲府)
・MF(背番号9)前田凌佑選手(前所属:大分トリニータ)
・MF(背番号11)近藤貴司選手(前所属:大宮アルディージャ)
・FW(背番号17)榎本大輝選手(前所属:徳島ヴォルティス)

 新加入選手7人の内、4人が過去に愛媛FCでプレーした経験がある選手たちである。
他クラブで経験を積み、愛媛FCの状況や環境を理解したうえで、戻って来てくれたのは、とても嬉しく感じる。

 また、浦田選手や内田選手、近藤選手は2015年の(愛媛FCが進出した)J1昇格プレーオフを経験したメンバーである。あの時の喜びや悔しさをサポーターと共に味わった選手たちが、もう一度、同じチームへと集い戦ってくれることは、とても心強く思える。

 監督やスタッフ、また選手のラインナップを見ても、まさに「原点回帰」を思わせるような布陣となった印象の2021シーズン新体制。

 リーグ戦においては下位4チームが降格となる極めて厳しいシーズンのスタートということで不安はあるが、大きな変革により生まれ変わった愛媛FCの「グレート・リセット」を間近で体感できそうで、楽しみな1年でもある。

 

<松本 晋司(まつもと しんじ)プロフィール>

1967年5月14日、愛媛県松山市出身。愛媛FCサポーターズクラブ「Laranja Torcida(ラランジャ・トルシーダ)」代表。2000年2月6日発足の初代愛媛FCサポーター組織創設メンバーであり、愛媛FCサポーターズクラブ「ARANCINO(アランチーノ)」元代表。愛媛FC協賛スポンサー企業役員。南宇和高校サッカー部や愛媛FCユースチームの全国区での活躍から石橋智之総監督の志に共感し、愛媛FCが、四国リーグに参戦していた時期より応援・支援活動を始める。


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