(写真:ニンジニアスタジアム正面玄関)

 忌まわしい東日本大震災から早くも10年という月日が過ぎ去ろうとしている。5年前に起こった熊本地震による様々な災害も記憶に新しい。地域の方々の努力もあり復興は進んではいるが、人々の心の傷は未だに癒えていない。

 

 自然災害は地震や津波だけに留まらない。2018年の夏には西日本豪雨が発生し、私たちの故郷(愛媛県)にも河川の氾濫や土砂崩れなど、大きな災害をもたらした。また人為的な要因が多いのかも知れないが、様々な地域での火災による被害も、この時節、報道を通じて耳にする機会が増えている。

 

 こういった多種多様な災害は、いつ何時、私たちの周辺で起こっても不思議ではなく、得体の知れない怖い存在に思える。しかし、それを恐れて、その日が来ないことをただ祈っているばかりでは、いざという時に、何の役にも立ちそうにない。

 

 日頃から『災害は必ず起こる』という心構えで、起こりうる様々な状況に備えることで、少しでも被害を食い止め、人命を守ることはできるのではないだろうか。

 

 J2開幕を目前に控えた2月20日(土)、ニンジニアスタジアム(愛媛FCホームスタジアム)がある愛媛県総合運動公園の管理関係者と愛媛FCによる合同緊急時対応訓練、及び避難訓練が行われた。

 

 訓練の会場となるのはニンジニアスタジアム。愛媛FCのホームゲーム試合中に地震や火災が発生したことを想定しての訓練である。愛媛県スポーツ振興事業団の方々や愛媛FCの事務局スタッフの他に、私たちボランティアスタッフやサポーターも参加した。

 

 訓練ではまず、スタジアム内の消火器や消火栓などの屋外消防設備の位置と使用方法の確認。また、避難誘導経路やAED(自動体外式除細動器)設置位置の確認も参加者全員で行った。

 

 避難訓練では、実際にスタジアム内にアラート(緊急速報と警報音)が鳴り響く中、参加者が一般観客役と誘導スタッフ役に分かれて、メインスタンド(観客席)から避難場所となる中央広場までの緊急避難を行い、手順や誘導方法などを学んだ。この避難訓練では、地震時と火災時の2パターンを想定した訓練を前後で行った。

 

 避難経路など、一通り確認が終わった後、模擬消火の訓練が行われた。スタジアム内グラウンドの脇に設置されている屋外散水栓を使用し、実際に放水作業を皆で体験した。普段、芝のピッチに散水しているホース付きの消火栓であるが、非力な方が一人でノズル部分を持って放水すると、振り回されるかも知れない程の水圧を感じた。なかなか普段、触る機会もない設備なので、個人的には貴重な体験でもあった。

 

 放水訓練の後、主催者からの挨拶が行われ、この日の訓練は終了となった。1時間程度の緊急時対応訓練であったが、各災害を想定した対応や気構えなど、参加者たちは多くのことを学べた。ホームゲーム中に災害が起こることなど、想像もしたくはないが、心構えと準備は大事なことであると改めて再認識した。

 

 J2開幕に向けた活動は、スタジアムでの訓練だけではない。2月27日(土)には愛媛FC2021シーズンの新ポスターや新チラシの配布活動が選手たちや事務局スタッフと共に私たちサポーターも参加して行われた。

 

「街中ポスター大作戦!!」と銘打たれた今回の活動では、松山市中央商店街である大街道と銀天街の各店舗を中心にポスター掲出のお願いや往来する人々へのチラシ配布活動が行われたのである。活動の範囲が広いということで当日、私は大街道周辺の担当に振り分けられての参加となった。実際の活動の際には、更に4グループ程に分けられた。コロナ禍ということで参加者は皆、マスクとビニール手袋着用での活動となった。

 

 私は(愛媛FC)横谷繁選手と事務局スタッフの児玉雄一さんの3名で大街道商店街の各店舗を訪問し、ポスター掲出を、お願いして回った。掲出のお願いに対し、たまに断られることもあったが、どの店舗の方も親切に対応してくれて、殆どのお店で快く引き受けてくださった。

 

 例年、街頭でのポスター配布の際は、事務局スタッフとサポーターのみでの活動ということが多いのだが今回は、現役選手が同行してくれて、本当に心強かった。知名度があるだけにいろんな方から声も掛けられるし、横谷選手を紹介することで、笑顔で出迎えてくれたり、サインを求める店舗責任者の方もいた。そんな「横谷繁パワー」もあり、私たちのグループで用意していたポスターは、ものの30分で全て無くなり配布完了。その後、他のグループと合流し、お手伝い。皆で頑張った甲斐もあり街頭での活動は1時間程で終了となった。

 

 後日、伺った話だが、「選手たちは今回の広報活動の趣旨に自ら賛同し、自主的に参加してくれた」とのことである。その気持ちは、とても嬉しく感じるし、選手たちが街へ出て人々とふれ合い、顔を売ってくれることで『あの選手、あのお兄さんが戦っているのなら、スタジアムへ足を運んでみよう』と考えてくれる方も増えていくはず。

 

 新型コロナウイルス感染症拡大が心配される中、今はまだ難しい事だとは思うが、「客席が満員のスタジアムで試合をしたい」そんな選手たちの思いが叶う日が、早く訪れてくれることを願って止まない。

 

<松本 晋司(まつもと しんじ)プロフィール>

1967年5月14日、愛媛県松山市出身。愛媛FCサポーターズクラブ「Laranja Torcida(ラランジャ・トルシーダ)」代表。2000年2月6日発足の初代愛媛FCサポーター組織創設メンバーであり、愛媛FCサポーターズクラブ「ARANCINO(アランチーノ)」元代表。愛媛FC協賛スポンサー企業役員。南宇和高校サッカー部や愛媛FCユースチームの全国区での活躍から石橋智之総監督の志に共感し、愛媛FCが、四国リーグに参戦していた時期より応援・支援活動を始める。


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