年の瀬も押し迫る12月23日(日)。第87回天皇杯全日本サッカー選手権大会の準々決勝の愛媛FC対川崎フロンターレが埼玉スタジアム2002で行われた。
(写真:オ〜レ君とたま媛ちゃんもスタンドから応援)
 前日から降り続いていた雨も試合開始2時間前には止み、晴天に恵まれた。13時、川崎フロンターレのボールで試合がスタートした。
 立ち上がり、愛媛FCは相手の素早いカウンター攻撃に手を焼く。DF陣の対応が後手にまわって、あわや失点か、というシーンが相次ぐ。それでも、サイドスペースを使った巧みなパスワークから、徐々に攻撃のリズムをつかんでいく。

 前半10分、左サイドの中盤でボールを持ったDF星野真悟選手が、相手DFの間を通す、鋭いキラーパスをタテに供給。同じサイドをオーバーラップしたMF江後賢一選手が、このボールに追いつき、ゴール前に攻め上がるFW田中俊也選手へとラストパスを送る。

 難しいバウンドとなったボールにタイミングをうまく合わせ、右足で地面に叩き付けるようなボレーシュートを放つ田中選手。相手GKの必死のセービングで得点には至らなかったが、素晴らしい攻撃をみせてくれた。

(写真:中盤で激しい攻防を繰り広げる) 前半11分、最終ラインのDF近藤徹志選手から、前線の左のスペースに向けて、ロングフィードが送られる。同サイドをオーバーラップした星野選手が、ボールがゴールラインを割る寸前に追い着き、半身の体勢からグラウンダーのセンタリングをゴール前に折り返した。ゴールエリアに攻め上がったFW内村圭宏選手が、このボールに反応し、シュート体勢に入るが、相手GKと接触して惜しくもゴールならず。チャンスが連続して生まれ、スタンドのサポーターも俄然盛り上がる。

 J1において屈指の攻撃力を誇る川崎に対し、愛媛DF陣も踏ん張り続ける。前半20分、セットプレーからピンチを迎える。自陣ゴール前へのアーリークロスをクリアできず、相手FWにフリーでヘディングシュートを放たれるが、GK川北裕介選手がスーパーセーブを見せ、ピンチを凌いだ。

 一進一退の攻防が続いたが、前半43分、愛媛は自陣ペナルティエリアへのクロスボールをクリア後、一瞬の隙を突かれ、先制点を奪われる。前半終了間際の痛すぎる失点に、溜め息が漏れるスタンド。それでも、愛媛のサポーターは奮起を促す応援コールを繰り返す。

 前半ロスタイム、再び、相手のセットプレーからピンチを迎えるが、相手FWのシュートを、再び川北選手がファインセーブで弾き返し、愛媛のピンチを救う。前半戦は、0−1で終了した。

 後半立ち上がり、愛媛FCは相手の素早いプレッシャーで、自陣に押し込まれ、苦戦を強いられる。後半1分、相手FWが自陣ペナルティエリアにドリブルで侵入。GKとの1対1の局面をつくられるが、川北選手が相手の足元のボールを奪い取り、またしても失点につながってもおかしくはないピンチを救った。

 後半7分にも、相手FWによるジャンピングヘディングシュートを横っ飛びのスーパーセーブで防ぎ、愛媛ゴールを死守する。そんな守護神の頑張りに応えたい愛媛攻撃陣だったが、後半19分、自陣ペナルティエリアでのDF金守智哉選手のプレーが、ファウルの判定となり、PKで追加点を献上。そして、金守選手が2枚目のイエローカードで退場となり、さらなる劣勢に立たされた。

(写真:愛媛FCは日本で屈指の収容人数を誇る埼玉スタジアムへ乗り込んだ) それでも、川北選手は攻撃陣の奮起を信じ、八面六臂の活躍を見せる。後半23分、自陣ペナルティアーク付近からの相手の直接フリーキックでピンチを迎えた。しかし、相手FWの強烈な弾丸シュートを、川北選手はしっかりと弾き返す。続く後半27分にも、相手のグラウンダーのシュートを左手一本で防いでみせた。

 終盤、愛媛FCはFWジョジマール選手やFW三木良太選手の投入で、反撃を試みるが、時間は無情にも過ぎ去り、ついにはタイムアップ。0−2で愛媛FCの惨敗に終わった。

 試合全体を通して、GK川北選手の活躍が目立つという皮肉な内容だったことからも、J1チームの攻撃力を改めて思い知った一戦だったと言えるだろう。

 しかしながら、愛媛FCは今回の天皇杯にて、日本の全クラブチームの8強に入るという大躍進を演じてみせた。その躍進は、愛媛のサッカー界においても歴史的偉業と言えるだろう。この成績に満足することなく、間もなく迎える2008シーズンにおいても、新たな歴史を創造して欲しいと思う。

松本 晋司(まつもと しんじ)プロフィール
1967年5月14日生まれ、愛媛県松山市出身。
愛媛FCサポーターズクラブ「Laranja Torcida(ラランジャ・トルシーダ)」代表。2000年2月6日発足の初代愛媛FCサポーター組織創設メンバーであり、愛媛FCサポーターズクラブ「ARANCINO(アランチーノ)」元代表。愛媛FC協賛スポンサー企業役員。南宇和高校サッカー部や愛媛FCユースチームの全国区での活躍から石橋智之総監督の志に共感し、愛媛FCが、四国リーグに参戦していた時期より応援・支援活動を始める。
◎バックナンバーはこちらから