さながら心細かったアキレス腱が3枚の新しいプレートによって補強されたという構図だ。

 

 開幕から広島の3人のルーキー投手が素晴らしいピッチングを続けている。栗林良吏(ドラフト1位)5試合、3セーブ、防御率0.00。森浦大輔(同2位)、4試合、3ホールド、同0.00。大道温貴(同3位)3試合、1ホールド、同0.00。その結果、4月4日現在、5勝3敗1分けで3位。Bクラス予想が多かった広島にすれば、順調なスタートだろう。それもこれも全ては3人の即戦力ルーキーのお陰である。

 

 5位に終わった昨季、広島は終盤にゲームを引っくり返されることが多かった。セーブ数21は東京ヤクルトと並んでリーグワーストタイ。ホールド数56はリーグワースト。指揮官の継投も達者とは言えず、土砂降りになって慌ててカサを探すようなことがよくあった。

 

 2月の沖縄キャンプ、東海地区担当スカウトの松本有史はグラウンドで監督の佐々岡真司に呼び止められた。「マツ、栗林の抑え、どう思う?」「ええ、十分できますよ」。クローザー候補のヘロニモ・フランスアが右ひざに不安を抱える中(3月に手術)、指揮官は新守護神を探していたのだ。

 

 振り返って松本は語る。「栗林はトヨタ自動車時代、JABA(社会人野球)選抜チームの一員としてアジア・ウインターリーグに出場し、優勝しているんです。その時には抑えを任されていた。1イニングなら150キロ台のストレートをバンバン投げられるし、フォークもカウントを整えるものと三振をとるものと2つ持っている。また社会人に入って覚えたタテ割れのカーブもある。そして何より度胸がいい。マウンドで叫んでいる姿を見ると“炎のストッパー”と呼ばれた津田恒実さんを思い出しますよ」

 

 その“津田2世”につなぐのが天理大出身のサウスポー森浦と八戸学院大出身の本格派・大道。再び松本のルーキー評。「森浦はブルペンより実戦で力を発揮するタイプ。ボールが高めに浮かないのは新人離れしている。もうひとりの大道は北東北大学連盟では、ほとんど打たれていないはず(防御率1.75)。スライダーはビュッと真横に滑る。このボールは一級品です」

 

 中国地方の戦国大名と言えば毛利元就。「三本の矢」をコンセプトに広島ブルペン、堂々の新装開店である。(小声で)ひょっとすると、ひょっとするかも……。

 

<この原稿は21年4月7日付『スポーツニッポン』に掲載されたものです>


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