満開の桜のもと、愛媛FCレディースが参戦する「プレナスなでしこリーグ1部」が無事に開幕の日を迎えた。

 

 昨シーズンは新型コロナウイルス感染症対策のため、通常の日程での開催ではなく、7月の開幕となるなど、選手たちにとって厳しいイレギュラーなシーズンとなった。

 

 今シーズンも試合の開催にあたり様々な制限が設けられてはいるが、幸いにも予定されていたスケジュール通りの開幕となり、胸を撫で下ろしている。

 

 3月27日(土)、2021シーズンの開幕戦が愛媛県総合運動公園球技場にて行われた。

 

 対戦相手は今季、なでしこリーグ1部に昇格したアンジュヴィオレ広島。現リーグでの先輩クラブである愛媛としては、負けられない相手である。

 

 ところが前半4分、相手FWにDFラインの裏を衝かれ失点。早々に1点のビハインドを背負ってしまった。それでも、愛媛イレブンは慌ててはいなかった。敵陣でボールを繋ぎ、徐々に攻撃態勢を整えていく。前半12分、MF大矢歩選手が敵陣・左サイドに開き、ボールをキープし、ペナルティアークに低い弾道のアーリークロスを供給する。このクロスに反応したFW山田仁衣奈選手が相手DFと競り合いつつ、右足アウトサイドで巧みにペナルティエリアへと流し込んだ。このボールを捉えたMF鈴木紗理選手がタイミングを合わせ、左足を振り抜く。 ボールは敵GKの足元を擦り抜け、見事ゴール! チームメイトとのハイタッチを繰り返し、喜びを表現する鈴木選手。サポーターによる歓喜の手拍子チャントが鳴り響いた。

 

 愛媛は早い時間で追いつき、試合のペースを握り始めた。後半は立ち上がりから積極的な姿勢を見せた。

 

 後半5分、DF筬島彩佳選手がハーフウェイライン付近から前線に、ロングフィードを放つ。このボールに反応した山田選手が敵DFラインの裏へと抜け出し、ペナルティーエリアに走り込む。ボールに追いついた山田選手がスライディング気味に左足でダイレクトシュートを放った! ボールは敵GKが伸ばした手の先を擦り抜け、ゴールマウス右隅に突き刺ささった。素晴らしい逆転ゴールにスタンドは大きな拍手が沸き起こった! 山田選手はチームメイトと抱き合い喜びを分かち合った。

 

 逆転弾の興奮が、まだ冷めやらない11分。途中出場ながら良い動きを見せていたMF藤澤和心選手が、敵陣左サイドをドリブルで駆け上がり、敵DFをかわしながらゴール前にクロスを供給。敵GKがジャンプしてパンチングで弾くものの、ボールはゴール前に転がる。このルーズボールを後方から走り込んで来たMF松本苑佳選手が冷静に押し込み追加点! 再び、歓喜の拍手に包まれていく球技場!

 

 結局、相手の4倍近くのシュートを放った愛媛FCレディースが攻撃力の差を見せつけ、最終スコア3-1で開幕戦を制した。

 

 試合終了後、私たちサポーターの前へ挨拶に来てくれた選手たち。満開の桜を背景に、喜び溢れる皆の笑顔が印象的であった。

 

 昨シーズン終了後、主力選手やレギュラーメンバーの移籍や引退が相次ぎ、心配されていたファンも少なくはなかったと思う。それでも今季、他チームからの移籍組や愛媛FCレディースMIKAN(育成組織)出身の新加入選手たちが現チームに上手く馴染んで、素晴らしい活躍振りを魅せてくれている。

 

 レギュラーメンバーの怪我や試合の延期などの不運もあり、調子を崩したのか(第9節終了時点)4月終わりから連敗が続いてはいる。だが、監督やスタッフと選手たちの関係性は良好に映る。今年はぜひ、上位進出を目指してもらいたい。

 

 現在、日本の女子サッカー界は、目まぐるしい変革の時を迎えている。9月からは、なでしこリーグの上位カテゴリーとなる女子プロサッカーリーグ「WEリーグ(Women Empowerment League)」がスタートする。

 

 なでしこリーグや下位カテゴリーが、この新しいプロリーグと、どのような関わり方をしていくのか楽しみでもあるので、今後の動向にも注目していきたい。

 

<松本 晋司(まつもと しんじ)プロフィール>

1967年5月14日、愛媛県松山市出身。愛媛FCサポーターズクラブ「Laranja Torcida(ラランジャ・トルシーダ)」代表。2000年2月6日発足の初代愛媛FCサポーター組織創設メンバーであり、愛媛FCサポーターズクラブ「ARANCINO(アランチーノ)」元代表。愛媛FC協賛スポンサー企業役員。南宇和高校サッカー部や愛媛FCユースチームの全国区での活躍から石橋智之総監督の志に共感し、愛媛FCが、四国リーグに参戦していた時期より応援・支援活動を始める。


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