(写真:最後のTLを無敗で制したパナソニック ©JRFU)

 第58回日本ラグビーフットボール選手権決勝を兼ねたジャパンラグビートップリーグ(TL)プレーオフトーナメント決勝が23日、東京・秩父宮ラグビー場で行われ、ホワイトカンファレンス1位のパナソニック ワイルドナイツがレッドカンファレンス1位のサントリーサンゴリアスを31-26で下した。パナソニックは2015年度以来の2冠を達成。TLは最多タイ5度目、日本選手権は6度目の優勝となった。

 

 シーズン無敗同士の対決は、パナソニックに軍配が上がった。来年に新リーグがスタートするため、今季がラストシーズンとなったTL。その締めくくりにふさわしく、これまで覇権争いを繰り広げてきたパナソニックとサントリーが最後の王座を競った。

 

 パナソニックはホワイトカンファレンスを6勝1分けで1位通過。プレーオフトーナメントに入ってからは近鉄ライナーズ、キヤノンイーグルス、トヨタ自動車ヴェルブリッツを破り、決勝にコマを進めた。10試合で計121失点。1試合平均12.1失点と鉄壁のディフェンスが持ち味である。19年W杯日本大会のジャパンに最多6人を送り出し、そのうち4人が第1列(PR、HO)を務めるなど安定したスクラムも武器としている。

 

 一方、サントリーはニュージーランド代表のボーデン・バレット、オーストラリア代表のサム・ケレビ、日本代表の中村亮土らを擁し、レッドカンファレンスを7戦全勝でトップ通過した。プレーオフトーナメントは2回戦で三菱重工相模原ダイナボアーズを下すと、準々決勝は不戦勝(リコーブラックラムズ)。準決勝では快進撃を見せていたクボタスピアーズを退けた。9試合計72トライと破壊力抜群の攻撃陣。「アグレッシブ・アタッキングラグビー」は今季も健在だ。

 

 試合は早々に動いた。自陣で守備の時間が続いていたパナソニックが先制した。4分、自陣でバレットのパスをCTBディラン・ライリーがインターセプト。50m以上を独走し、インゴール中央に飛び込んだ。SO松田力也がコンバージョンキックを決め、7点のリードを奪った。プレースキック精度の高い松田は14分と25分にもPGを落ち着いて決めた。対するサントリーは17分にバレットがPGを外すなど波に乗れない。

 

 すると30分、パナソニックが追加点を加える。松田が左サイドで待つWTB福岡堅樹に飛ばしパスを送った。今季限りの引退を表明している快速WTBは、ボールを持つと加速する。「相手はいましたが自分では獲り切れると思っていました」と振り返ったように追走してきたWTB中靍隆彰を振り切り、バレットに押し出されそうになりながらもインゴール左隅に飛び込んだ。松田がコンバージョンキックを成功し、20-0と点差を大きく広げた。

 

 35分まで無得点だったサントリーも反撃を開始。前半は中村のトライとバレットのコンバージョンで23-7と差を詰めた。後半開始早々にはオフロードパスの連続から最後は中靍がトライ。1トライを加えられたものの、途中出場SH齋藤直人のトライなどで28‐19と迫った。残り10分で9得点差。逆転勝ちの望みを繋いだ。

 

 だが、パナソニックはサントリーの勝機を削り出すように激しいプレッシャーをかける。33分、FL福井翔大がジャッカルでペナルティーを獲得。これをSO山沢拓也がPGを決め、12点差に広げる。その後も堅いディフェンスでサントリーの反撃をしのいで時計の針を進めた。終了間際に1トライ1ゴールを返されたが、31-26で逃げ切った。

 

 キャプテンのHO坂手淳史は「サントリーのすごいアタックを止め切ったみんなのことを誇りに思う」と胸を張った。最強の盾が最強の矛を跳ね返した。「(中止となった19年度を含む)2シーズン無敗。目の前の結果をうれしく思う」とロビー・ディーンズ監督。名将の下、規律を守り続けた野武士軍団が、最後のTLで頂点に立った。

 

(文/杉浦泰介)