投げても打っても驚くことばかりの大谷翔平(エンゼルス)だが、その立ち居振る舞いが、また素晴らしい。

 

 

<この原稿は2021年5月31日号『週刊大衆』に掲載されたものです>

 

 5日(日本時間6日)、本拠地のレイズ戦での出来事。3回、オースティン・メドウズの放った強烈なピッチャー返しを間一髪好捕……かと思ったら、グラブからフワリ。それを素手で捕り、アウトにしたのだ。

 

 こんなアクロバティックな捕球ができるのは、抜群の運動神経とセンスを併せ持つ大谷くらいのものだろう。

 

 直後、メドウズに近付き、笑顔で何かささやいた。「アンラッキー!」とでも言ったのかと思いきや、「ソーリー!」と言って謝罪したというのである。ヒットを1本損させて悪かったな、ということか。メドウズ始め、レイズの選手の誰もが「ナイスガイ」と思ったに違いない。

 

 その一方で大谷には「タフガイ」の一面もある。

 

 2日(同3日)、敵地でのマリナーズ戦でジャスタス・シェフィールドから右肘にデッドボールを受けた。「ウォーッ!」という悲鳴とともにその場にうずくまった瞬間、骨折を予感した者もいたのではないか。

 

 幸いプロテクターを付けていたため大事には至らなかったが、翌日に予定されていた登板日は2日後にズレ込んでしまった。

 

 驚いたのは死球直後の二盗、三盗である。まるで高性能のスポーツセダンのような走りで、次の塁を陥れていくのだ。

 

「オレにぶつけると、こうなるぜ……」

 

 大谷の顔には、そう書いてあった。

 

 大谷がメジャーリーグで“二刀流”を貫くにあたり「左打者ゆえ右肘の死球が気になる」と心配する声が少なからずあった。

 

 しかし、あの足を見せられたら、迂闊には内角を攻められなくなる。ぶつけて損をするのは自分たちだ、とメジャーリーグの多くのピッチャーが肝を冷やしたはずである。

 

 このように大谷のプレーには、そのひとつひとつに重要なメッセージが込められている。それを読み解くのも、また一興だ。

 


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