巨人が横浜の守護神マーク・クルーンに続いて、ヤクルトの先発投手で、今季セ・リーグの最多勝右腕セス・グライシンガーを獲得することになった。さらに巨人はヤクルトの主砲アレックス・ラミレスの獲得をも視野に入れていると言われている。

 3人の今季の成績を紹介しよう。クルーンが3勝1敗31セーブ、防御率2.76。グライシンガーが16勝8敗、防御率2.84。ラミレスが打率3割4分3厘、29本塁打、122打点。成績的には申し分ない。
 3人に共通して言えるのはメジャーリーグではほとんど無名、日本で大きく花開いたプレーヤーであるということだ。巨人のフロントにすれば名よりも実をとったということだろう。

 巨人はいいが、引き抜かれた方はたまったものじゃあるまい。特にヤクルトはエースと主砲をともに、07年のリーグ王者に奪われてしまったのだ。戦力格差は広がる一方だ。
 勝つための戦略として、他球団から実績のある外国人を引き抜くのは悪い選択ではない。しかし、「夢がないなぁ」と感じるのは私だけだろうか。
 これ以上、弱い者イジメをして、どうするの。ますますプロ野球人気の低下を招くだけじゃないか。

 昔の巨人は他球団の手垢の付いた外国人選手には手を出さなかった。外国人を獲るにしてもデーブ・ジョンソンやロイ・ホワイトといったメジャーリーグのトッププレーヤーを連れてきた。そこに巨人なりのプライドが感じられたものだ。

 ところが今じゃ、ヨソの球団で成功した“メイド・イン・ジャパン”の外国人を横取りするばかり。確かにこちらの方が失敗は少ないだろうが、あまりにも手堅すぎて面白味に欠ける。
「それよりももっと自前の選手を育ててくれよ」
 そう考えている巨人ファンは少なくないのではないだろうか。

 グライシンガーが投げ、クルーンが抑え、ラミレスが打って勝つ。果たして巨人ファンはそれで満足なのか?

<この原稿は07年12月31日号『週刊大衆』に掲載されたものです>

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