『PRIDE』が事実上、消滅したことで勢いを欠いた2007年の日本総合格闘技界だが、ここにきて息を吹き返しつつある。
 新団体WVR(ワールド・ビクトリー・ロード=来年3月5日、東京・代々木第一体育館で旗揚げ)の発足に続き、旧PRIDEスタッフによって『やれんのか! 大晦日! 2007』(12月31日・さいたまスーパーアリーナ)が開催されることが決定した。
(写真:21日に行われた『やれんのか! 大晦日! 2007』開催記者発表会見にて。左から青木、マッハ、高田本部長、ヒョードル、川尻、石田)
 当然、恒例となっている『Dynamite!!』(京セラ大阪ドーム=TBSテレビで放映)も船木誠勝×桜庭和志戦をメインに行われるわけで、これで今年も大晦日には「格闘技2大スーパーイベント」が実現する。加えて、『やれんのか! 大晦日! 2007』に『Dynamite!!』を主催するFEGも支援を表明したのだから面白いことになってきた。大晦日のTBSの放送は、『Dynamite!!』と『やれんのか! 大晦日! 2007』の二元中継になる可能性も出てきたのだ。

 注目されるのは『やれんのか! 大晦日! 2007』のカード発表だが、既に決定しているのは次の4カード。
▼青木真也(修斗世界ミドル級王者=パラエストラ東京)vsJ.Z.カルバン(06、07年HERO’Sミドル級トーナメント優勝者=アメリカン・トップチーム)
▼桜井“マッハ”速人(元修斗世界ミドル級王者=マッハ道場)vs長谷川秀彦(DEEPウェルター級王者=SKアブソリュート)
▼川尻達也(元修斗世界ウェルター級王者=T-BLOOD)vsルイス・アゼレード(シュートボクセ・アカデミー)
▼石田光洋(元修斗環太平洋ウェルター級王者=T-BLOOD)vsギルバート・メレンデス(ストライクフォース・ライト級王者=ジェイク・シールズ・ファイティングチーム)
 
(大晦日、ヒョードルの相手は誰になるのか……)
 出場予定選手には、ヨアキム・ハンセン(元修斗世界ウェルター級王者=ノルウェー/チームフロントライン)、ヒカルド・アローナ(PRIDEミドル級GP2005準優勝=ブラジリアン・トップチーム)、三崎和雄(PRIDEウェルター級GP2006優勝=GRABAKA)らの名前が挙がっているから、これから続々とカードが決定するだろうが、気になるのはやはり既に参戦を表明しているエメリヤーエンコ・ヒョードルが誰と闘うかである。
 最初、吉田秀彦と対戦との噂が流れた。実現すればスーパーカードである。しかし、大会開催決定から当日までの時間の短さを考えると吉田サイドが受諾するとは思えず実現の可能性は低そうだ。
 続いて、チェ・ホンマンと対戦するのでは……との声が聴こえてきた。チェは12月8日、横浜アリーナで開かれる『K-1 WORLD GP2007』決勝トーナメントに出場するので、この大一番が終わらないことには何も考えられないだろう。ヒョードル×チェ・ホンマン戦になる可能性はあるが、総合格闘技を闘う上では実力差が大きいように思える。『PRIDE』のリングで実現しなかったジョシュ・バーネット戦もあるが彼は、ヒョードルと仲が良過ぎる。拳を交えることを両者がともに拒みそうだ。 
 ならば、一度闘い好勝負を演じている藤田和之とのリマッチ、あるいはFEGの協力を仰いでK-1系ファイター、もしくはボブ・サップという線もあるが果たしてどうなるのか? 我々が思いつかないサプライズを期待したい。

 旧PRIDEスタッフとFEGが手を組んだことは大晦日のイベントよりも、その後に大きな期待を抱かせる。『やれんのか! 大晦日! 2007』はヒョードルと契約している「M-1 GLOBAL」がトップスポンサーである。旧PRIDEスタッフたちは今回のイベントを「ケジメ」と口にし、一回限りのものと話しているが、大晦日のファンの反響次第では、来年以降も大会が開いていくことも十分に考えられる。「M-1 GLOBAL」も、そのことに大いに乗り気だ。ならば現在、FEGと友好関係にあるヒクソン・グレイシーとヒョードルの対決も見えてくるのではないか。
 ヒクソンは来春、日本のリングに上がるつもりでいる。対戦相手は、桜庭でも船木でもなくヒョードルであることを望む。


近藤隆夫(こんどう・たかお)
1967年1月26日、三重県松阪市出身。上智大学文学部在学中から専門誌の記者となる。タイ・インド他アジア諸国を1年余り放浪した後に格闘技専門誌をはじめスポーツ誌の編集長を歴任。91年から2年間、米国で生活。帰国後にスポーツジャーナリストとして独立。格闘技をはじめ野球、バスケットボール、自転車競技等々、幅広いフィールドで精力的に取材・執筆活動を展開する。テレビ、ラジオ等のスポーツ番組でもコメンテーターとして活躍中。著書には『グレイシー一族の真実〜すべては敬愛するエリオのために〜(文春文庫PLUS)』ほか。
連絡先=SLAM JAM(03-3912-8857)
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