12月1日(土)、J2第52節(最終節)の愛媛FC対湘南ベルマーレが、ホーム(愛媛県総合運動公園陸上競技場)にて行われた。長かったリーグ戦も、いよいよ今節で最終戦を迎える。2年目のジンクスが囁かれながらも、愛媛FCはここまで踏ん張り続け、リーグ戦10位のポジションをキープしてきた。
(写真:右サイドで仕掛ける愛媛MF江後賢一選手)
 11月30日時点で、リーグ戦過去6試合で勝利から見放されてはいるが、今年の総決算ともいえるこの最終節で、全力を出し切り、来季につながる結果を残して欲しい。

 メインからバックスタンド側へと強い風が吹き抜ける中、時刻は12:00をまわり、愛媛FCのボールで試合が始まった。
 立ち上がり、愛媛は自陣のサイドのスペースを相手に突かれ、苦戦を強いられる。その上、相手の反則まがいの激しいチェックに手を焼き、なかなか前線にボールを運べない。

 前半36分、自陣右サイドへ侵入を許し、ゴール前でのDFのクリアミスもあり、相手に先制点を奪われてしまった。「まだまだ試合は、これからだ!」。サポーターから檄が飛ぶ。選手たちも必死に反撃を試みるが、前半戦は0−1で終了した。

 後半戦の序盤、相手陣内深くまで攻め込むものの、ファーストアタック後のセカンドボールをキープできず、単調な攻撃が続く。それでも、ミドルシュートを駆使し、フィニッシュまで持ち込むことで攻撃のリズムを掴み始める。

 後半34分、MF宮原裕司選手の右サイドからのアーリークロスを、ペナルティエリアに陣取るFW田中俊也選手が受け取り、DFをかわしつつ、シュートを放つ。GKにクリアされるが、これによりコーナーキックのチャンスを得た。
 左からコーナーキックを放つのはMF赤井秀一選手。ゴール前に向けて、絶妙のセンタリングを供給されると、ペナルティエリアに陣取るDF近藤徹志選手が、ジャンプ一番、DFに競り勝ち、強烈なヘディングシュートを放った。GKも必死に手を伸ばしてボールには触れたものの、シュートの勢いは止まらず、ゴールネットに突き刺さった。
 セットプレーからの見事な同点ゴール。スタンドが、歓喜の渦に包まれていく。選手たちが近藤選手に駆け寄り、手荒な祝福を浴びせる。待望の1点を手に入れ、愛媛FCの反撃ムードが一気に高まった。

(写真:愛媛DF星野真悟選手がゴール前で果敢にドリブル突破) 同点ゴールの興奮冷めやらぬ、わずか1分後の後半35分、勝ち越し弾が生まれる。自陣でパスカットした宮原選手がつなぎ、FW大木勉選手が勢い良くドリブルで敵陣に攻め込んで、センターサークル付近から右サイドに開いていた田中選手にパスを送る。中央まで回り込み、左サイドでフリーの赤井選手にパスを送る田中選手。赤井選手は、DFをドリブルでかわしながらペナルティアークに侵入して、シュートコースが開いた瞬間、右足でグラウンダーの強烈なシュートを放った。ゴール左隅に目がけて飛んでいくボールは、ポストに当たりながらも、ゴールマウスに吸い込まれた。華麗なカウンター攻撃による素晴らしい勝ち越しゴール。サポーターたちによる歓喜のコールが鳴り止まない。2得点に絡む赤井選手の活躍に、スタンドから大きな拍手と歓声が送られた。

 もちろん、相手チームも黙ってはいない。新たなカードを切って反撃を試みる。後半38分、愛媛は自陣ペナルティエリア内でファウルを取られ、PKを与えてしまう。この試合、最大のピンチだったが、守護神のGK川北裕介選手が横っ飛びのスーパーセーブで強烈なシュートをガッチリと押さえ、愛媛FCの危機を見事に救ってみせた。川北選手に抱きつく選手たち。サポーターも喜びを爆発させる。スタンドの盛り上がりも最高潮に達していった。

 その後の残り時間、愛媛FCは守りきり、2−1でタイムアップ。愛媛FCが劇的な逆転勝利で今季のリーグ最終戦を締めくくった。奇しくもこの日、望月一仁監督は50歳の誕生日を迎える。選手たちからのバースデイプレゼントといえるような素晴しい内容の試合だった。

 J2リーグ2007シーズンの最終成績は、12勝27敗9分の勝ち点45。13チーム中10位という結果だった。満足のいく成績とは言えないが、今節の90分間という短い時間の中で、チームとしての熟成や選手個々の成長の跡も見受けられ、来季に向けて希望を抱くことができたと思う。

松本 晋司(まつもと しんじ)プロフィール
1967年5月14日生まれ、愛媛県松山市出身。
愛媛FCサポーターズクラブ「Laranja Torcida(ラランジャ・トルシーダ)」代表。2000年2月6日発足の初代愛媛FCサポーター組織創設メンバーであり、愛媛FCサポーターズクラブ「ARANCINO(アランチーノ)」元代表。愛媛FC協賛スポンサー企業役員。南宇和高校サッカー部や愛媛FCユースチームの全国区での活躍から石橋智之総監督の志に共感し、愛媛FCが、四国リーグに参戦していた時期より応援・支援活動を始める。
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