08年度の新入団選手獲得を目的とした四国・九州アイランドリーグのトライアウトが12月1日、2日の2日間、埼玉県のロッテ浦和球場で開催された。105名の応募の中から実際に投手33名、野手53名の86名が受験し、未来のアイランドリーガー、そして未来のNPB、MLB選手を目指してアピールを行った。

(写真:関東圏を中心に各地から集まった参加者たち)
 今回のトライアウトは愛媛・新居浜市(11月23、24日)での実施に続き、2回目。初日は50メートル走や遠投、キャッチボールなどの基本動作を主にチェックし、投手24名、野手33名の57名が2日目のテストに臨んだ。

 2日目はさらに実戦形式の中で試験が行われ、シートノックや連係プレー、各投手が1イニング限定で登板するゲームなどで見極めが行われた。新規参入する長崎セインツの河埜敬幸監督、新体制となった高知ファイティングドッグスの藤川順一GMや宮崎一彰プレーイングコーチら、各球団の首脳陣は各選手の動きに目を光らせ、メモを盛んにとったり、スピードガンで球速計時をしていた。

 また、初日にはアイランドリーグ出身の千葉ロッテ・角中勝也、東京ヤクルト・伊藤秀範両選手が会場に顔を出した。ルーキーイヤーで1軍昇格を果たし、2軍で好打率(.335)を残した角中は先日、100万円アップの550万円で契約を更改。伊藤は50万円ダウンの550万円だが、シーズン当初の育成選手契約(300万円)から支配下登録を勝ち取った(金額はいずれも推定)。実際にリーグ経由で夢をかなえたプレーヤーの登場は受験者たちへの大きな刺激となったに違いない。

  トライアウトに臨んだ選手たちの出身、経歴はさまざま。日本のみならず、11月のアジアシリーズに出場したSKワイバーンズ(韓国)の打撃投手、チェ・サンミン投手(写真)など、海外からかけつけるケースもあった。甲子園や都市対抗などのひのき舞台で名を馳せたプレーヤーはいないが、「プロ野球選手になりたい」との夢は同じ。自分の持ち味を最大限に発揮しようとの思いがひしひしと伝わってきた。

 140キロ台の速球を連発し、バックネット裏を騒がせたのは近藤健太朗投手(千葉日本大学第一高−中央学院大)(写真)。現在は高校野球のコーチを務め、自らは草野球に参加する程度で「(合格の)自信はない」と振り返ったが、その力強い投球は充分なアピール材料となった。

 逆に球速こそないが、「球の出どころが見づらくおもしろい」との評価を集めたのが189センチの長身サウスポー、山本晃太郎投手(元石川高−東京経済大)だ。「ソフトバンクの和田(毅)投手や杉内(俊哉)投手が憧れ」と語る21歳は「ヒットを打たれてしまったので、どう判断されたかわからない。ただ、自分の特徴を評価してもらえれば」と朗報を心待ちにしていた。

 また今回のトライアウトに向け、投球フォームを変え、勝負に出た投手もいた。宮島裕二投手(花咲徳栄高−旭川大)(写真)はそのひとり。「上手投げでMAX140キロも出ないので、何かアピールするものをつくりたかった」と、この夏からサイドスローに転向した。BCリーグのトライアウトは不合格だったというが、この日は、サイドから右打者のインサイドを突き、外に逃げるスライダーが効果的に決まった。「これは期待できそう」。各球団の首脳陣が思わず身を乗り出す内容に、本人も「やることはやった」と満足そうな表情を浮かべた。

 野手では右打ちながら、甘野陽祐内野手(北海道大麻高−北星学園大)が坪井智哉(北海道日本ハム)そっくりのバッティングフォームをみせた。「もうちょっと引きつけて打ち返すバッティングが持ち味」と苦笑いしながら、一塁線を痛烈に破る流し打ちをみせ、センスの良さを感じさせた。守備でも元気よく声を出し、ハツラツとしたプレーを披露。テストの合間には徳島・森山一人コーチからスナップスローを教わる一幕もあった。「実は四国は行ったことがないんです」と告白しながら、「新庄(剛志)さんのような華のあるプレーヤーに」と早くも四国での生活を楽しみにしているようだった。

 また、元アイランドリーガー、元BCリーガーの“再チャレンジ組”も他の受験者としのぎを削った。アイランドリーグでは今季限りで退団した徳島・益田陽介投手(写真)、戦力外通告を受けた同・田久保賢植外野手が受験。BCリーグからは優勝した石川ミリオンスターズから戦力外通告を受けた植木孝外野手、堀聖治内野手らが挑戦した。
「(戦力外を受け)納得できないところがあった。走塁や守備範囲の広さでは他の選手には負けない」と植木選手が新天地でのプレーを熱望すれば、堀選手は「(金森栄治監督から)腰を使ったバッティングを教わり、野球が楽しくなってきたところだった。ぜひ続けたい」と語っていた。

 トライアウトは12月8、9日に福岡市内で第3回目が実施され、合格者を最終決定。10日にドラフト会議を開催して、各球団が指名を行い、入団交渉に入る。今秋のドラフト会議では育成選手も含めて6選手のドラフト指名を受けた影響か、福岡での参加希望者も100名を超えているという。
 12月1日付で四国・九州アイランドリーグのCEO(最高経営責任者)に就任し、トライアウトを視察していたIBLJ鍵山誠社長は「年々、トライアウトに来る選手の質が高まっているように感じる。ぜひ、この中から夢を叶える選手が出てほしい。それを僕たちも精一杯バックアップしたい」と、来季から6球団制となるリーグに手ごたえを感じていた。


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