6日、東京オリンピックスポーツクライミング女子複合決勝が東京・有明アーバンスポーツパークで行われた。優勝はボルダリングとリードで1位を獲得したヤンヤ・ガンブレット(スロベニア)。日本勢は野中生萌(XFLAG)が銀、野口啓代(TEAM au)が銅メダルを手にした。

 

 今大会から新競技に採用されたスポーツクライミング。複合は速さを競うスピード、どれだけ課題をクリアできるかが求められるボルダリング、登った高さで争われるリードの3種目で付与されたポイントで順位が決まる。各種目の順位点は1位1.0、2位2.0、3位3.0と続く。その順位点を掛け算したポイントが最も少ない選手が勝者となる。

 

 8人で行われる決勝のスピードはトーナメント戦。野中と野口はともに準決勝で敗れた。3位決定戦で日本人対決。ここは野中に軍配が上がり、野中が3.0ポイントで3位、野口が4.0ポイントで4位。まずまずのスタートを切った。この種目のトップは6秒84の世界新記録で決勝に勝利したアレクサンドラ・ミロスワフ(ポーランド)。1.0ポイントで暫定1位に立った。

 

 2種目目のボルダリング。18年から2年連続で複合世界女王に輝いたガンブレットが、その実力を遺憾なく発揮した。スピード5位の優勝候補大本命は、長い手足を生かし、いびつで難易度の高い壁も着実に登っていく。第1課題を完登すると、第2課題は1回の試技でクリアする“一撃”で完登。第3課題こそゾーン獲得(途中にあるチェックポイント)にとどまったが、2課題クリアはガンブレットのみだ。

 

 日本勢もボルダリングは得意とする種目だが、1完登もできなかった。野中と野口は2ゾーン獲得。試技数の少なさから野中がこの種目3位で3.0ポイント、野口が4位で4.0ポイントが与えられた。野中は右手首と右膝にテーピングを巻いた状態だが、持ち前のダイナミックなクライミングで粘りを見せた。一方の野口は“稼ぎどころ”で4位は厳しい状況に追い込まれた。

 

 最終種目はリード。この時点での暫定順位はガンブレットが5.0ポイントで総合トップに立った。野中が9.0ポイントで3位、野口は16.0ポイントで6位だった。高さ12m以上の壁を6分の間にどこまで登れるかを競うリード。4番目に登った野口だ。「一番得意のボルダリングで1本も登れず心が折れそうだった」。今大会を競技生活の集大成に置いている彼女にとっては、これが最後のクライミングだ。“一手でも多く登りたい”。最終種目疲れも蓄積してきているが、「結構疲れていて限界だったけど、気持ちでプッシュできたん」と“29+”(+は次のホールドを取りに行くアクションがあった場合につく)を記録した。

 

 続くガンブレットが野口を上回る“37+”を記録。暫定総合トップをキープした。続く野中は“21”でこの種目暫定3位。この瞬間、ガンブレットの金メダルが確定した。最後の2人が野口を上回り、リード3位と2位。リードはガンブレットが1位、野口が4位、野中が5位。総合順位はガンブレットが5.0ポイント(5.0×1.0×1.0)でオリンピック初代女王に輝いた。野中は45.00ポイント(3.0×3.0×5.0)で2位、野口は64.00ポイント(4.0×4.0×4.0)で3位と順位を上げ、日本勢ダブル表彰台を達成した。

 

(文/杉浦泰介)

 

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野中、壁を越える強さ求める(2017年1月28日掲載)