東京五輪・パラリンピックが終わると、9月からはサッカーカタールW杯アジア最終予選がスタートする。

 

 

 7大会連続7度目のW杯出場を目指す日本はオーストラリア、サウジアラビア、中国、オマーン、ベトナムと同じグループBに入った。

 

 6カ国の世界ランキングを上から順に並べると日本28位、オーストラリア41位、サウジアラビア65位、中国76位、オマーン80位、ベトナム92位。

 

 6カ国はホーム&アウェイの総当たり戦を行い、2位以内ならばカタール行きが決定する。3位になった場合はA組の3位とアジアプレーオフを行い、その勝者が大陸間プレーオフで雌雄を決する。

 

 9月から始まる最終予選で注目している選手がいる。横浜F・マリノスのFWオナイウ阿道だ。阿道と書いて「あど」と読む。

 

 オナイウはナイジェリア人の元サッカー選手を父に、日本人の元バレーボール選手を母に持つ。身長180センチ、体重75キロ。FWのサイズとしてはノーマルだが、身体能力が高く、対人にも強い。

 

 見物は空中戦だ。一瞬、空中で止まっているのではないか、と思わせるほどの跳躍力を有する。自らより長身の選手に対しても、容易に制空権を明け渡すことはない。

 

 蛇足だが、昔、「いやはや、鳥人だ」というビタミン剤のCMがあった。

 

 外国の少年が木に吊り下げられた頭上よりもはるかに高いボールを、信じられないほど高く跳び上がり、そのまま蹴り上げるのだ。あれを思い出す。

 

 現在、25歳のオナイウにとってのターニングポイントは、2年半前の2018年。出場機会に恵まれなかった浦和レッズから、J2レノファ山口に期限付きで移籍した。

 

 本州最西端のクラブでオナイウはブレークした。リーグ戦全42試合に出場し、22得点を記録したのだ。

 

 この活躍が認められ20年からは現在の横浜FMへ。今季は20試合で12得点(7月17日現在)を記録し、リーグ2位のチームを牽引している。

 

 代表で名をあげたのは6月15日、パナソニックスタジアム吹田で行われたW杯アジア二次予選のキルギス代表戦。わずか6分間でハットトリックを達成した。

 

 特筆すべきは2点目だった。前半31分、MF川辺駿(現・グラスホッパー)が右サイドをドリブル突破し、クロスを上げる。オナイウは相手DFの死角を突いてペナルティーエリア内へ。難なく左ヒザでゴールに押し込んだ。

 

 試合後、森保一監督は「普段(Jリーグで)やっていることを発揮してくれた」と言って目を細めた。

 

 オナイウはスポーツ動画サイトDAZNのインタビューでこう語っている。

「動き直しでセンターバックと駆け引きができている。(駆け引きの重要性を)マリノスのスタッフにも言われたし、やっぱり駆け引きは大事だな、と」

 

 日本代表のワントップは大迫勇也(ブレーメン)の指定席。当面はサブからのスタートか。指揮官の起用法にも注目が集まる。

 

<この原稿は『サンデー毎日』2021年8月8日号に掲載されたものです>

 


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