第289回 「更新」~今季前半戦におけるトップチームの動き~
2021シーズンのJ2リーグも前半戦の日程を終え、後半スケジュールへと突入。
リーグ戦にて降格圏(19位以下の順位)まで落ちたり、抜け出たりを繰り返し、苦戦を強いられている今季の愛媛FC。この危機的状況にクラブのフロント陣は、どのような判断を下してきたのか、開幕戦以降のトップチームの動きを振り返りたいと思う。
「原点回帰」というスローガンを掲げ、意気揚々と2021シーズンをスタートさせた愛媛FCトップチーム。しかし、開幕戦から(引き分け試合はあるものの)1勝もあげられないまま、第6節(4月4日)まで終了。結果、最下位に落ちた。
その試合後、和泉茂徳監督がチームの成績不振の責任を取り辞任を発表した。これを受けて急遽、監督を務めることになったのは、トップチームコーチの實好札忠さん。心の準備は元より、クラブの環境やチーム状況なども充分に把握できていない状態での突然のオファーだったと思われる。それでも、實好さんは、持ち前の負けん気の強さで、チーム再建のため、立ち上がってくれた。
そして今年4月、實好監督が提唱する「動き勝つサッカー」の具現化を目指し、J2残留に向けて、チームは再スタートを切ることになった。
また同時に、愛媛FC U-18のコーチを務めていた小笠原侑生さんがトップチームの新コーチへと就任することもあわせて発表された。
シーズン途中での下部組織からのスライド起用は2018年の川井健太さんのトップチーム監督就任を思い出す。今回もアカデミーへ迷惑を掛けるかたちとなってしまったのは、とても残念。それでも愛媛FCの環境や状況を熟知している小笠原さんのコーチ就任はきっと實好さんを上手くサポートしてくれているはず。トップチームから見れば、有り難い人選だったのではないか。
4月27日には、ガンバ大阪から育成型期限付き移籍でFW(背番号38)唐山翔自選手の加入が発表された。高校卒業したてのルーキーだが、Jリーグでの実戦経験もあり、足元でのボールさばきも上手く、フロント陣の評価も高い選手だ。
6月15日には、サガン鳥栖から育成型期限付き移籍でFW(背番号40)石井快征選手が加入。積極的な攻撃姿勢が持ち味で、8月からの公式戦では先発起用され、チームへの順応が早く即戦力なFWである。
7月22日には、モンテディオ山形より期限付き移籍にてDF(背番号15)栗山直樹選手が加入。栗山選手は、8年間に渡りJリーグで活躍している経験値の高い選手である。
主にセンターバックを務め、DFラインの統率にも長けている印象がある。
同日、松本山雅FCより期限付き移籍にてDF(背番号27)高木利弥選手の加入も発表された。高木選手のお父さんは、元サッカー日本代表の高木琢也さん(SC相模原の監督)。「アジアの大砲」とも呼ばれた有名なFWの選手だったが、利弥選手はDF登録で、主にウイングバックのポジションを務める。お父さんから譲り受けたものなのか、ガッチリした体格で、身体能力も高そうに見える。脚力も長所で、スピードやジャンプも競り負けない強さを持っているようなので、愛媛でも、その力を発揮してもらいたい。
2021シーズンも半分が終わり、主力メンバーにはケガ人も出て、台所事情が苦しくなる中、期限付き移籍という条件下ではあるが、手堅く選手補強を進めている点は、愛媛FCのフロント陣を評価したい。
實好監督就任後、トップチームの戦績に劇的な変化は見られないものの、チーム内の雰囲気は明らかに良くなっているように思われる。それにともない選手たちの士気も、高まっている様子で、ここ数試合、好ゲームを連発している。各試合、先制点を奪えるようになってきているし、途中、逆転されても諦めず、終盤には追い着くという粘り強さも見られる。
実際、ピッチ上の選手たちは、試合の最後まで必死に泥臭く戦う姿を見せてくれている。かつての愛媛FCらしい戦い方を取り戻しつつあるように感じるのだ。
私たちサポーターも選手やスタッフ、クラブのフロント陣を信じ、今季のJ2残留を実現するため、シーズンの最後まで熱い気持ちで応援や支援を続けていきたい。
本当の「原点回帰」は、ここからだ!
<松本 晋司(まつもと しんじ)プロフィール>
1967年5月14日、愛媛県松山市出身。愛媛FCサポーターズクラブ「Laranja Torcida(ラランジャ・トルシーダ)」代表。2000年2月6日発足の初代愛媛FCサポーター組織創設メンバーであり、愛媛FCサポーターズクラブ「ARANCINO(アランチーノ)」元代表。愛媛FC協賛スポンサー企業役員。南宇和高校サッカー部や愛媛FCユースチームの全国区での活躍から石橋智之総監督の志に共感し、愛媛FCが、四国リーグに参戦していた時期より応援・支援活動を始める。