(写真:整備工事が進む南海放送サンパークの運動ひろば)

 今年の6月18日、愛媛FCオフィシャルサイトにてトップチームの専用練習場となるトレーニング施設の整備工事の開始が発表された。

 

 かつて愛媛FCトップチームや下部組織、サッカースクールなどが練習場として活用していた南海放送サンパーク(松山市井門町)。愛媛FCにとっての元祖・本拠地とも言えるサンパークが、トップチームのために再整備されるという。

 

 現況、発表されている整備内容は、サンパーク内の「運動ひろば」に天然芝グラウンド1面とクラブハウス、また倉庫やナーサリーなどが設けられるとのこと。来年(2022年)春からの利用開始を予定している。

 

 2010年にクラブハウスをサンパークから愛フィールド梅津寺(松山市梅津寺町)へと移転した愛媛FC。それに加え、レインボーハイランド(松山市菅沢町)や北条スポーツセンター(松山市大浦)なども時々使用している。

 

 レインボーハイランドと北条スポーツセンター陸上競技場は天然芝グラウンドであるが、選手たちが最も長時間利用している練習施設は、愛フィールド梅津寺であり、そのグラウンドは人工芝である。

 

 一部の選手からは「人工芝ではなく天然芝のグラウンドでトレーニングを行いたい」という強い要望を耳にする機会が多い。人工芝グラウンドでのトレーニングは、選手たちの足関節や肉体への負担が大きいそうで、怪我のリスクも高いとのこと。

 

 また、公式戦は天然芝グラウンドでの試合となるため「人工芝では実戦感覚を掴み辛い」という意見もあるようだ。

 

 今回の施設整備は、このような選手たちによる環境改善の要求に応えるためのものだと考えられる。

 当初、一部の報道では「愛媛FCが愛フィールド梅津寺グラウンドの天然芝生化を目指している」と伝えられていたが、(芝生を育てるための)ナーサリー用の敷地確保の問題があったのだろうか、実際にはサンパークでの施設整備へと大きく舵を切る形となった。

 

 今回、愛媛FCが下した判断に対し、快くご理解とご協力頂いた南海放送株式会社様には感謝申し上げたい。

 

 1994年の愛媛フットボールクラブ創設時から活用されてきたサンパーク内の運動ひろば。元々は、野球やサッカー等が楽しめる多目的広場として誕生し、整備されていたため、グラウンドの(南東)隅には野球用のコンクリート基礎を要したバックネットが設置されていたことが印象深い。

 

愛媛FCのユースチームやトップチームの練習を見学する際には、そのバックネット裏に荷物を置かせてもらって、フェンス越しに眺めることもしばしば。時折、フェンスを越えてグラウンド外へと飛んでいったサッカーボールを拾いに行ったりしたこともあった。

 

 また、人工芝が敷設される前は、土のグラウンドだったため、雨の日は選手たちが泥だらけになりながらトレーニングに打ち込んでいた情景も懐かしく思い出される。

 

 1999年のシーズン終了後にサポーターズクラブの結成を思いつき、当時のクラブハウス内1階奥の応接室で当時、総監督だった石橋智之さんと色々お話しさせていただいたこともあった。

 

 その後も、3日に一度くらいのペースで、仕事帰りにサンパークへと足を運んでは、クラブハウス内の事務所へと入り浸り、石橋先生や(愛媛FCトップチームの選手兼コーチだった)大西貴さん、(愛媛FCトップチームの監督だった)兵頭龍哉さんたちと、今後の愛媛FCやサッカー業界について語り合ったことも良き思い出である。

 

 サポーターズクラブ結成後(2000年2月以降)は、クラブハウス2階の会議室をサポーターミーティングやポスターや冊子など広報活動用のグッズ作成のために活用させていただいたこともあった。当時(四国リーグ時代)は、まだ愛媛FC事務局は存在していなかったため、私たちサポーターズクラブが愛媛FCの広報活動等の一部を担っていたのである。 それまで一度も行われたことがなかった「ファン感謝祭」もサポーターズクラブで企画して、サンパーク内の駐車場や運動ひろばを、お借りして開催させていただいた。

 

 

素人が考えて実施した分、手作り感満載のイベントではあったが、選手たちとファンが気軽に交流する機会を作れたのも、サンパークのお陰である。

 

 また、シーズン中にはアウェイに向けた応援遠征用のレンタカーやチャーターバスの発着場(乗り合わせの場所)としてサンパークの駐車場をお借りすることも度々あった。

 

 選手たちやスタッフ、そして沢山のサポーター仲間との出会いや交流の機会を与えてくれた「南海放送サンパーク」。ここでは語り尽くせない程、私にとっては思い出に溢れた場所である。

 

 来年、トップチーム専用の練習施設として、新たに生まれ変わることになるが、個人的には「原点回帰」にも通じる思いもあり、懐かしさと共に、レガシー復活への喜びも感じている。

 

 大きなバックボーンが無く、運営費用が限られる中、今まで競技や練習環境の不備を指摘され続けてきた愛媛FC。今回の施設整備が選手たちのための環境改善への大きな一歩となることを願って止まない。

 

<松本 晋司(まつもと しんじ)プロフィール>

1967年5月14日、愛媛県松山市出身。愛媛FCサポーターズクラブ「Laranja Torcida(ラランジャ・トルシーダ)」代表。2000年2月6日発足の初代愛媛FCサポーター組織創設メンバーであり、愛媛FCサポーターズクラブ「ARANCINO(アランチーノ)」元代表。愛媛FC協賛スポンサー企業役員。南宇和高校サッカー部や愛媛FCユースチームの全国区での活躍から石橋智之総監督の志に共感し、愛媛FCが、四国リーグに参戦していた時期より応援・支援活動を始める。


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