総務省が20日の敬老の日を前に公表した人口推計によると、高齢者、すなわち65歳以上の人口は前年より22万人増の3640万人で総人口に占める割合(高齢化率)は29.1%に達した。いずれも過去最高である。

 

 日本人の平均寿命は女性が87.74歳、男性が81.64歳。女性は世界1位、男性は2位。日本は世界に冠たる長寿国なのだ。

 

 しかし、喜んでばかりもいられない。平均寿命と継続的な医療・介護を必要としない健康寿命は、女性で約12年、男性で約9年の差がある。そこで「平均寿命を上回る健康寿命の延伸」が課題として浮上してきているわけだが、その解決策のひとつとして期待されているのが生涯スポーツの普及だ。

 

「コロナ禍により生涯スポーツの意義が逆に高まっているように感じられます」。そう語るのはワールドマスターズゲームズ関西2021(WMG)組織委の吉田武司だ。「コロナ禍で外に出られない、人と接することができない状況が続いている。だからこそ体を動かしたい、スポーツを楽しみたいという欲求が高まっているのではないか。ロードバイクなどは品切れの店が相次いでいるようです」

 

 新型コロナウイルスの感染拡大により延期を余儀なくされたのは東京五輪・パラリンピックだけではない。今年5月14日から30日にかけ、2府8県(大阪府、京都府、兵庫県、福井県、滋賀県、奈良県、和歌山県、鳥取県、徳島県、岡山県)で実施予定だったWMGも来年5月13日から29日に1年延期された。

 

 周知のようにWMGは<概ね30歳以上の成人・中高年の一般アスリートを対象とした生涯スポーツの国際総合競技大会>。国内外合わせて5万人の参加者を見込んでいる。

 

 スポーツを「する人」「観る人」のみならず「支える人」も育てていく、というのが文科省が旗を振る「スポーツ立国戦略」の基本方針だが、コロナ下、「支える人の意識に変化が出ている」と吉田は言う。「オリパラロスもあるんでしょうか。SNS上で“次のボランティアは何をしよう”“次はWMGがあるぞ”“じゃあ関西で会おう”という投稿をよく見かけます。12月末がボランティアの締め切りですが、今エントリーが急増しているんです」。WMGの理念は「スポーツ・フォー・ライフ」。すなわち、スポーツで人生を豊かに――。「する人」「観る人」「支える人」が三位一体となっての国際大運動会。大会後にWMGロスが起きれば成功だろう。

 

<この原稿は21年9月22日付『スポーツニッポン』に掲載されたものです>


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