2022年サッカーW杯カタール大会への道のりは、当初の予想より、はるかに厳しいものとなっている。

 

 

 日本代表は4戦を終え、2勝2敗の勝ち点6。グループBの4位だ。1位はサウジアラビア(勝ち点12)、2位オーストラリア(同9)、3位オマーン(同6)。日本は、その下だ。

 

 すんなり出場権を得られるのは2位まで。3位だとプレーオフに回らなければならなくなる。

 

 このプレーオフの仕組みが厄介だ。まずは22年5月か6月に予定されているA組3位に勝ち、アジア5位の座を確保しなければならない。

 

 この後は大陸間プレーオフに移行する。アジア5位、北中米カリブ海4位、南米5位、オセアニア代表の4カ国が2組に分かれ、ホーム&アウェイ方式で対戦。勝利した2カ国に出場権が与えられる。

 

「3位までなら(W杯出場の)可能性があるとはいえ、さすがに、そこまでは考えたくない。それに未知の大陸間プレーオフは何が起こるかわからない。何としてでも代表には2位以内に食い込んでもらいたい」(協会幹部)

 

 10月12日、埼玉スタジアムで行われたオーストラリア戦は、勝ち点1以下(引き分けか敗戦)なら、森保一監督の解任が現実味を帯びていた。

 

 10月9日付けの日刊スポーツ1面には<長谷川健太氏 後任浮上>との見出しが躍っていた。

 

 しかし、森保ジャパンは、何とか土俵際で踏みとどまった。過去9勝9分け7敗のオーストラリアを破り、勝ち点3を手に入れた。

 

 殊勲甲は、このゲーム、インサイドハーフに起用された田中碧(デュッセルドルフ)。東京五輪代表からの昇格組で、W杯予選では初出場だった。

 

 見せ場は前半8分。MF南野拓実(リバプール)のクロスをペナルティーエリア右で受け、右足を振り抜いた。グラウンダーのシュートはゴール左隅に突き刺さった。

 

 先制点を決めた田中は、この後も攻守両面でチームに貢献した。小気味のいいリズムでパスをさばき、体を張ったプレーで何度もピンチを未然に防いだ。

 

 試合は後半25分、MFアイディン・フルスティッチのフリーキックで同点に追いつかれたものの41分、FW浅野拓磨(ボーフム)の粘りから生まれた相手のオウンゴールで2対1とし、そのまま逃げ切った。

 

 田中のプレーぶりについては以前、辛口で鳴る元代表DFの田中マルクス闘莉王がこう述べていた。

 

「(ボールを)捌いてゲームをコントロールする遠藤(保仁)や中村憲剛のような選手。前に飛び出していくタイミングは浦和レッズにいた頃の長谷部(誠)のよう。長谷部より田中の方がシュート力はある」(ユーチューブ闘莉王TVより)

 

 闘莉王にここまで褒められるとは、大したものだ。

 

「日本サッカー界のためにW杯に出ることが目標。子供たちに日本代表がW杯で戦う姿を見せられるように必ず勝って次につなげたいと思っていた」

 と本人。巻き返しのエンジンとしての期待がかかる。

 

<この原稿は『サンデー毎日』2021年11月7日号に掲載されたものです>

 


◎バックナンバーはこちらから