第292回 「再編」~愛媛FCレディース 2021シーズン終盤戦~
「なでしこリーグ1部」参入2年目の愛媛FCレディース。今季から「なでしこリーグ2部」への降格(入れ替え戦等)の新規定が導入された。昨シーズン、最下位(10位)と悔しい結果に終わった愛媛としてはリスクを避け、少しでも上位進出を目指していた。
3月に開幕した「2021プレナスなでしこリーグ1部」も、10月初旬には、その順位が確定する最終盤戦へと突入。
第19節終了時点で6位の愛媛FCレディース。10月3日(日)に行われた第20節では、ホーム(愛媛県総合運動公園球技場)にて、リーグ戦2位の日体大FIELDS横浜と対戦した。
前半、体格差を生かした相手の攻めに苦しんだ。後半に入っても、厳しい時間帯が続くが、愛媛のDF陣が踏ん張り、自陣でボールをキープ。その後、徐々に敵陣内のサイドスペースを利用し、攻撃を組み立てた。
後半24分、愛媛がコーナーキックのチャンスを得る。MF筬島彩佳選手がショートコーナーからFW大矢歩選手にボールを送る。大矢選手は中央に駆け込む筬島選手へパスを通す。筬島選手は敵ゴール前にダイレクトDeクロスを供給。このボールを村上朱音選手が相手DFと競り合いながらヘディングシュートを放つと、ボールは敵ゴールマウスに突き刺さった! セットプレーからの見事な先制点だった。
結局、このゴールが決勝点となり愛媛FCレディースが1-0で激闘を制した。この結果、愛媛はニッパツ横浜FCシーガルズを抜いて5位に浮上した。
10月9日(土)には、ホーム(愛媛県総合運動公園球技場)にNGUラブリッジ名古屋を迎え、第21節が行われた。
序盤、愛媛は相手に先制を許し、その後も追加点を奪われ、3点のビハインドを背負ってしまった。試合終了間際にFW安藤百合香選手が見事なループシュートを決め、1点を取り返すが、時すでに遅し。1-3で愛媛FCレディースの敗戦となった。
それでも同節、他会場の6位・ニッパツ横浜FCシーガルズが引き分けたため、勝ち点、僅かに1差で愛媛FCレディースが5位に踏み止まった。
今シーズン最終戦となる第22節は、10月17日(日)に行われ、愛媛がアウェイ(ミツトヨスポーツパーク郷原)に乗り込み、アンジュビオレ広島と対戦した。
終始、押し気味に試合を進める愛媛。チャンスは創り出すものの、得点には至らないイライラした展開が続く。スコアレスのまま、後半アディショナルタイムへと突入し、1分が経過。焦りを感じながらも敵陣でボールを繋ぐ。敵陣内・右サイドからアーリークロスを供給するMF松永早姫選手。相手GKがパンチングで弾くが、ゴールエリア内にボールがこぼれる。次の瞬間、ゴール前に詰めていたDF佐藤比香理選手が素早く反応し、頭で押し込み見事、ゴール!
この得点が決勝点となり、1-0で愛媛FCレディースが最終戦を勝利で締め括った。
2021年、愛媛FCレディースの最終戦績は、9勝8敗5引き分け(勝ち点32)で12チーム中、5位。昨年の上位チームが「なでしこリーグ1部」から「WEリーグ」へと戦いの場を移したことにより、リーグ構成が変化した恩恵もあると思うが、それでも昨年の最下位から大きくジャンプアップできたことは評価したい。
今季の序盤戦、主力メンバーの移籍や一部選手の怪我などの影響からだろうか、チームバランスを崩し、結果を出せない苦しい時期があった。それでも、愛媛らしい持ち前の粘り強さは健在で、後期日程に入ると新戦力の活躍もあり、徐々に調子を上げ、終盤は素晴らしい戦いぶりを魅せてくれた。
女子サッカー界やチーム状況が大きく様変わりする昨今、容易な事ではないと思うが、来季は更なる上位進出を期待したい。
10月27日(水)、「2021プレナスなでしこリーグ表彰式」が行われ、FW山田仁衣奈選手が、なでしこリーグ1部の「新人賞」を受賞された。今季、新加入の山田選手。得点の決定率の高さが評価されたようだ。今後は、愛媛の攻撃陣を引っ張ってくれるような選手へと成長して欲しい。
また、愛媛FCレディースが、なでしこリーグ1部の「フェアプレー賞」を受賞したことも併せて発表された。ボディコンタクトが激しさを増す上位カテゴリーの中にあって、年間を通し反則ポイント数が最も少ないというのは、サッカーチームにとって、とても誇らしいことだと思える。
「フェアプレー賞」の受賞は今回で2度目だ。こういった所に「愛媛らしさ」や「愛媛サッカーの良さ」が表れているのかもしれない。できることならば、これからもフェアプレー精神をチーム内で継承していってもらいたい。
<松本 晋司(まつもと しんじ)プロフィール>
1967年5月14日、愛媛県松山市出身。愛媛FCサポーターズクラブ「Laranja Torcida(ラランジャ・トルシーダ)」代表。2000年2月6日発足の初代愛媛FCサポーター組織創設メンバーであり、愛媛FCサポーターズクラブ「ARANCINO(アランチーノ)」元代表。愛媛FC協賛スポンサー企業役員。南宇和高校サッカー部や愛媛FCユースチームの全国区での活躍から石橋智之総監督の志に共感し、愛媛FCが、四国リーグに参戦していた時期より応援・支援活動を始める。