見た目はド派手だが、濃い内容だった。北海道日本ハムの新監督に就任した新庄剛志の記者会見のことである。

 

 

<この原稿は2021年11月29日、12月2日号『週刊大衆』に掲載されたものです>

 

 約1時間に及んだ会見の中で、個人的に印象に残ったのが北海道についてのコメントだ。

 

「僕、ふるさといっぱいあるんですけど、そのひとつが北海道。住みやすいし、僕、寒いのは好きな方なんで。あと、おいしいものもたくさんあるし。これから家の方を探して、いい家が見つかってくれたら最高ですね」

 

 監督就任記者会見の6日前、新庄はツイッターに、こう投稿していた。

<プロ野球の存在意義はそこの街に住む人達の暮らしが少しだけ彩られたり、単調な生活を少しだけ豊かにする事に他なりません>(10月29日配信)

 

 いや、本当にその通りだと、思わずヒザを打った。

 

 米国ではベースボールのことを「ナショナル・パスタイム」と呼ぶ。国家的、国民的な娯楽である。

 

 それは明治期にベースボールが米国から入ってきた日本においても同様だ。高校野球を始めアマチュアの大会が、これほど活気を帯びている国は他にない。

 

 新庄に話を戻そう。大上段に振りかぶらず、「少しだけ」とつぶやく姿に“らしくない”と思われた方がいるかもしれないが、元々、彼はそういう男である。

 

 03年夏、当時、メッツに在籍していた新庄に日本ハム入りを打診し、交渉した三沢今朝治統括本部長(当時)から、かつて、こんな話を聞いた。

 

「新庄が日ハムに入団した04年の秋、日米オールスターチーム同士による試合が行われた。コミッショナーから“ポスターに12球団のスター選手の写真を使いたい。日ハムからは是非、新庄君を”という話があった。それを伝えると新庄は“ウチには小笠原道大がいるから”と言って渋ったんです。ああ見えて、実際はものすごく謙虚で、気づかいのできる男なんです」

 

 野球の力で、道民の暮らしに「少しだけ」でも彩りや潤いを与えることができれば、それだけでも拍手喝采である。

 


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