第101回サッカー天皇杯決勝戦の浦和レッズ対大分トリニータ戦が19日、国立競技場で行われ、2対1で浦和が3年ぶり4回目の優勝を果たした。試合は前半6分、MF江坂任の得点で浦和が先制。後半45分にMFペレイラのヘディングで大分が一時同点に追いついたものの、アディショナルタイムにDF槙野智章のヘッドで浦和が勝ち越した。

 

 今季で浦和退団の槙野、宇賀神が途中出場(国立)

浦和レッズ 2-1 大分トリニータ

【得点】

[浦] 江坂任(6分)、槙野智章(90+3分)

[大] ペレイラ(90分)

 

 これほどドラマチックな展開が待っていると誰が予想できただろうか。できすぎた90分の物語だった。

 

 均衡が破れたのは6分。浦和のMF小泉佳穂が相手DFをテクニカルな股抜きでかわし、ペナルティーエリア右サイドに侵入する。こぼれ球をMF関根貴大が拾い、エリア中央の江坂にラストパスを送る。江坂はこのボールを丁寧に右足インサイドでゴール左に流し込み浦和が先制した。

 

 大分は中盤がダイヤモンド型の4-4-2を採用していたが、機能不全に陥っていた。浦和のMF伊藤敦樹や小泉の巧みなポジショニングが大分の中盤を混乱させていた。

 

 後半に入ると大分の片野坂知宏監督はダイヤモンド型の中盤からオーソドックスなダブルボランチに布陣を変更。トップ下からボランチにポジションを下げた下田北斗を中心にパスを回し、徐々に流れを引き寄せた。6分、低い位置から上がってきた下田が左足でクロスを入れるが、DFアレクサンダー・ショルツに惜しくもクリアーされた。

 

 浦和は今季で退団するDF宇賀神友弥(outはFWキャスパー・ユンカー)を27分、槙野(outは小泉)を38分に投入する。浦和は槙野投入で5バックに変更し、守備固めに入った。槙野は「天皇杯の残り10分を槙野劇場にしたい」と意気込み、決勝の舞台に立った。

 

 しかし後半45分、浦和は大分に追いつかれる。下田に左サイドから利き足とは逆の右足でクロスを入れられると、ペレイラにファーサイドから頭で合わされてスコアをタイに戻された。

 

 槙野劇場の幕が上がったのは後半アディショナルタイムだった。右コーナーキックのこぼれ球からMF柴戸海が左足でミドルを放つ。ジャストミートした強烈なシュートをペナルティーエリア内にいた槙野がヘディングでコースを変える。大分GK高木駿の逆を突き、ボールはネットに突き刺さった。槙野は縦横無尽にピッチ内外を走り回り、喜びを爆発させた。

 

 2対1のまま試合終了の笛が鳴り、浦和は3年ぶりに天皇杯を制覇した。槙野は試合後「来季、僕はいないが、若い選手に最高の後押しをお願いします」とファンに語りかけた。ゴールシーンについて、千両役者はこう振り返った。

 

「柴戸選手の癖もわかっていたし、彼のシュートが外れてもいいようにしっかりポジションを取っていた。頭に強く当てるよりコースを変えることを意識した」

 

 準決勝では宇賀神が、決勝では槙野がゴールを決め、浦和は天皇杯制覇とACL出場権の切符をもぎ取った。今季で契約満了となった両選手は大きな置き土産を残し、シーズンを終えた。

 

(文/大木雄貴)