17日、北京冬季オリンピックのフィギュアスケート女子フリースケーティングが首都体育館で行われ、ショートプログラム(SP)3位の坂本花織(シスメックス)が自己ベストを更新する合計233.13点で銅メダルを獲得した。255.95点のアンナ・シェルバコワが金、251.73点のアレクサンドラ・トゥルソワが銅のROC(ロシアオリンピック委員会)勢がワンツー。一方でドーピング騒動に揺れたカミラ・ワリエワ(ROC)はフリーでミスを連発し、SPトップから4位に落ちた。その他日本勢は樋口新葉(明大)が5位、河辺愛菜(木下アカデミー)が23位だった。なおIOC(国際オリンピック委員会)は一連のドーピング騒動を受け、この結果を暫定順位としている。

 

 ROCの高い壁に挑んだ日本の坂本、樋口、河辺。複数の4回転ジャンプを組み込んだ高難度のプログラムを披露するROC勢に圧倒されたが、日本女子のエースが一矢報いた。

 

 まずはオリンピック初出場、17歳の河辺が冒頭のトリプルアクセルに失敗するなど得点を伸ばせなかった。同じく初出場の樋口は最終グループでの登場。SPで成功したトリプルアクセルをフリーでも決めた。3回転ルッツ+3回転トウループの連続ジャンプこそ転倒したものの、140.93点をマークし、SPと合わせて214.44点で暫定トップに立った。

 

 RCR勢最初の演技者は21年世界選手権の銅メダリスト・トゥルソワだ。トウループ、サルコウ、フリップ、ルッツの4種類の4回転ジャンプを跳ぶことができる17歳。フリーの演技には4回転ジャンプ5本を組み込んできた。12項目の技の合計技術点は驚異の95.39。GOE(出来栄え点)の加点を含めると106.16というハイスコアを叩き出した。フリー177.13点を加え合計251.73点で樋口のスコアを抜いた。

 

 団体戦、SPとラストを務めた坂本。トゥルソワの“4回転劇場”の直後という難しい順番ではあったが、4回転ジャンプ、トリプルアクセルはなくとも坂本らしい力強いパフォーマンスで対抗した。海外のドキュメンタリー映画『WOMAN』で使用された『No More Fight Left In Me』の楽曲に乗りながらジャッジの前を艶やかな表情で滑る。

 

 ステップシークエンスは最高評価のレベル4とジャッジに認定された。坂本はジャンプ、ステップ、スピンをほぼミスなく滑り切り、全ての技にGOEで加点される堂々のパフォーマンスを見せた。79.64点の自己ベストをマークしたSPに続き、フリーも自己ベストを塗り替えた。153.29点を加え、233.13点。トゥルソワのスコアには及ばなかったが、この時点で2位につけた。

 

 続く演技者は21年世界選手権女王のシェルバコワである。SPで2位につけていた17歳も冒頭の4回転フリップ+3回転トウループの連続ジャンプを含む、4回転ジャンプが2本組み込むプログラム。合計技術点は100.49とトゥルソワ同様に大台を超えた。長い手足を生かしたスケーティングで氷上を舞い、完成度の高いパフォーマンス。フリーの得点は175.75点とトゥルソワに及ばなかったものの、SPでのアドバンテージにより、トータルスコアでは4.22点上回った。

 

 この時点で既にROC勢2人のメダルが確定。FSR(フィギュア・スケーティング・ロシア)として参加した21年の世界選手権に続く表彰台独占をオリンピックでも果たされようとしていた。最終演技者は、その圧倒的な強さから“絶望”の異名をとるワリエワ。今大会、ワリエワはドーピング騒動に揺れていたが、SPでは82.16点でトップに立った。だが完全無欠と思われていた15歳もジャンプでことごとく失敗。シニア参戦後負けなしだったワリエワはフリーで全体5位に沈み、表彰台から滑り落ちた。

 

 これで坂本の3位が確定。日本人同種目としては3大会ぶり4人目の表彰台に上がった。本人も「びっくりし過ぎて、最初点数を見た時には3位と認識できなかった」とコメントするほどのアップセットだった。18年平昌オリンピックは6位入賞。4年後の北京で女子シングルと団体で2個の銅メダルを手にし、「今まで頑張ってきたことが報われてうれしいです」と笑顔で大会を締め括った。

 

(文/杉浦泰介)