17日、北京冬季オリンピックのノルディックスキー複合団体が国家スキージャンプセンターなどで行われ、日本は渡部暁斗(北野建設)、渡部善斗(同)、永井秀昭(岐阜日野自動車)、山本涼太(長野日野自動車)の4人が出場。前半の飛躍で4位につけると、後半の距離(20キロ)で順位をひとつ上げて3位に入った。日本の同種目メダル獲得は1994年リレハンメル大会の金メダル以来、28年ぶり。金メダルはノルウェー、銀メダルはドイツだった。

 

 両拳を突き上げフィニッシュした4走の山本は、そのままチームメイトたちの胸に飛び込んだ。4位オーストリアに4.4秒先着。銀メダルのドイツにはわずか0.3秒差まで肉薄しての銅メダル。14年ソチ大会以降、ノルウェー、ドイツ、オーストリアの3強が表彰台を独占してきた難攻不落の種目で、ついに日本が悲願を果たした。

 

 前半の飛躍(HS140メートル、K点125メートル)で466.6点の4位につけた日本は、後半の距離(4×5キロ)を首位オーストリアから12秒遅れでスタートした。

 

 第1走者は渡部善。飛躍で133.5メートルと本領発揮した渡部兄弟の弟が、距離でも流れをつくる。「今日のMVPはワックスマン(板の滑走面にワックスを塗る担当者)。スキーがすごく滑りました」。レース後、チームスタッフを称えた会心の滑りで、オーストリア、ドイツとトップ集団を形成。ひとかたまりのまま第2走者にリレーする。

 

 第2走者を務めた38歳の永井も、128.5メートルをマークした飛躍に続き、ひと仕事する。ノルウェーが追いついて4人となったトップ集団の最後方で食らいつき、メダル圏内をキープ。不完全燃焼に終わった前回平昌大会の悔しさをぶつける滑りを見せ、トップと4.6秒差で第3走者にタッチする。

 

 第3走者はエースの渡部暁だ。個人で3大会連続のメダル(15日ラージヒル)を獲得していたが、飛躍では伸びを欠き125メートルに終わっていた。それでも距離では安定した滑りを披露。ドイツが遅れた先頭集団の3番手でレースを進めた。最後の上りで仕掛けたノルウェーに10秒ほどリードを許したものの、オーストリアとはほぼ同時の2位で第4走者に運命を託した。

 

 アンカーは山本。得意の飛躍で日本チーム最長の135.0メートルを飛んだ24歳はオーストリアとの2位争いで一歩も退かない。しかし、後ろからも強敵が迫ってきていた。男子個人ノーマルヒル覇者のビンツェンツ・ガイガーを4走に据えたドイツだ。そのまま一気に追いつかれると、残り1周、2位集団は三つ巴の争いとなった。お互いを牽制し合う息詰まる展開になったが、山本は冷静だった。

 

 最後の上り、ドイツとともに抜け出し、オーストリアを突き放す。山本は残りの力を振り絞るように体を左右に大きく揺らして前進。同じ赤白のユニフォームを着たオーストリアに先着した。94年リレハンメル大会以来、遠ざかっていた表彰台に上がった。

 

 殊勲の山本はレース後、充実した表情で振り返った。

「表彰台にとりあえず先輩方を上げたいっていうのがあったので、気持ちが先走っていた感じです」

 

 エースの渡部暁頼みではない戦いぶりだった。メンバー4人でつなぎ、勝ち取ったメダル。3強の勢力図を塗り替えて、思いはまたつながれていく。

 

(文/古澤航)