原油価格の高騰によりガソリンは昨年の同時期に比べ16.4%も値上がりした。4月からは輸入小麦の価格が30%引き上げられる。小麦が原料として使われているのはパンや麺だけではない。食品に加えビールなどもいっせいに小売価格に転嫁される。そうなれば、ますます家計は「生活防衛」の色を強め、レジャー関連支出を抑えるようになる。さてプロ野球は大丈夫か? と不安に思うのは私だけではあるまい。

 プロ野球はファミリー向けの娯楽であるといいながら、チケット代はさして安くはない。たとえば東京ドームの巨人戦を例にとろう。最高はいわゆるバックネット裏の指定席Sで5900円。外野指定席でも1700円。仮に内野の2階席中央から両翼ポール際までの指定席Bを家族4人分購入したとしよう。3700×4で1万4800円。ビールを飲んで弁当を食べれば、もうそれだけで2万円は超える。決して気軽に楽しめる娯楽とは言えない。

 とはいえ、現場サイドが打てる手は限られている。「結局、我々選手はいいプレーをお客さんにお見せして喜んでもらうしかありませんから」。キャンプ中、何人かの選手に聞くと、ハンで押したようにこの言葉が返ってきた。監督のコメントも似たりよったり。「勝つことで満足してもらうしかありませんよね」。諦め顔で、こうつぶやいた指揮官もいた。

 ひとつ大切なことを忘れていやしまいか。それは昨日の本紙で有本義明氏も指摘している「試合時間の短縮」である。要するにスピードアップしろということだ。野球が“間”のスポーツであることは理解できるが、自らの都合で打席やプレートを外す選手が多過ぎる。

 審判のストライクゾーンも幾分ワイドでいいのではないか。よく「ストライク、ボール、これはどちらにもとれますねぇ」という解説を聞くが、少々、乱暴に言えば、そんなボールは「振らなかった方が悪い」と割り切ってストライクにとって欲しい。審判のストライクゾーンがワイドだとわかると打者の見送りはかなり減るだろう。結果としてゲームが活性化する。観客の満足度も増すのではないか。

 いずれにしても今季のペナントレースは消費熱の冷めた逆風の中でのスタートとなる。繰り返すが家計の中のレジャー関連費は限られている。プロ野球は選ばれるのか。

<この原稿は08年2月27日付『スポーツニッポン』に掲載されています>

◎バックナンバーはこちらから