第295回 「音圧」 ~愛媛FC U-18チームの2021シーズン(後編)~
愛媛FC U-18チームが参戦している「高円宮杯JFA U-18サッカープリンスリーグ四国」。2021シーズンもリーグ戦はホーム&アウェイの全18試合の開催を予定していたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、第10節~第13節までの4試合が中止となり、は全14試合になった。
終盤戦では、首位のカマタマーレ讃岐U-18を愛媛FC U-18が追う、白熱したリーグ戦が展開されたが、そのプリンスリーグ2021四国も、昨年の12月4日(土)に全日程が終了。
愛媛FC U-18の最終戦績は、9勝2敗3引き分け(勝ち点30)で10チーム中、2位。準優勝リーグ戦を終えた。惜しくも優勝に手が届かなかったが、試合日程の変更による試合延期、タイトなスケジュールを余儀なくされ、調整が難しい中、終盤は3連勝で締め括り、前期日程から順位を1つ上げての2位だった。
この結果を受け、愛媛FC U-18は高校生年代における日本最高峰のリーグ「高円宮杯JFA U-18サッカープレミアリーグ」への参入を争う「2021プレーオフ」に進出した。(2021シーズンのプリンスリーグ四国では、1位と2位に出場権が与えられた)
この2021プレーオフでは、日本の各地域のリーグ戦を勝ち上がった全18チームが、6つのブロックに分かれ勝ち抜き戦を行い、各ブロックの優勝チームのみにプレミアリーグ2022に参入する権利が与えられる。プリンスリーグ終了から僅か6日後。休む間もなくスタートする参入戦(プレーオフ)。
負ければ即敗退となる厳しいトーナメント戦。3年ぶりのプレミアリーグ復帰に向けて、愛媛FC U-18の負けられない戦いが始まる。
愛媛は2021年12月10日(金)に行われる1回戦から登場。「Cブロック」に振り分けられ、初戦は旭川実業高校(プリンスリーグ北海道2位)と対戦することになった。
試合会場は「バルコムBMW広島総合グランド(広島県広島市)」のメインスタジアム。
私たちサポーター有志4名は、自家用車に乗り合わせ、朝の4時30分に松山市を出発。しまなみ海道を通って、試合開始の2時間前(午前9時)には広島に到着した。
会場にて愛媛県外在住のサポーターとも合流し、スタンドに横断幕を掲出。試合開始と共に有志5名による全力の手拍子と太鼓の応援で愛媛の選手たちを後押した。
試合の立ち上がり、少々硬さも見受けられた愛媛イレブン。それでも、前半22分にコーナーキックのチャンスを得る。
右コーナーからMF伊井涼馬選手がゴール前・ニアサイドにセンタリングを供給すると、DF浅井一希選手が上手く合わせ見事、先制ゴール! この得点で一気にペースを握り、試合を優位に進めた。少々、自陣に押し込まれても落ち着いてDF陣が対応。試合終盤も細かくパスを繋ぎながら、敵陣で時計の針を進める。
後半のアディショナルタイム。FW行友翔哉選手の素晴らしいフリーキックが決まると同時に歓喜の中、試合終了の笛の音が響き渡った。
最終スコア「2-0」で愛媛FC U-18が旭川実業を降し1回戦を突破した。
続く2回戦(優勝決定戦)は、初戦から中1日で迎えた12月12日(日)に行われた。
対戦相手は4人のJリーグ入団内定選手を擁し、第100回 全国高校サッカー選手権でも話題を集めた強豪チームの静岡学園高校(プリンスリーグ東海1位)。静岡学園はプリンスリーグ東海の優勝チームとして1回戦は免除され2回戦からの登場である。試合会場は一昨日と同じく「バルコムBMW広島総合グランド」のメインスタジアム。
この日は、愛媛から8名のサポーター有志が自家用車2台の乗り合わせで、会場へと駆け付けた。この2回戦を勝利すれば、Cブロック優勝、プレミアリーグ昇格が決定する大一番だ。私たちサポーターも気合を入れて応援に臨んだ。
しかし、試合は序盤から、静岡学園のペース。相手の攻撃陣がハイレベルのテクニックを披露し、愛媛陣内でボールをキープし続ける。苦しい展開の中、前半10分、守備網を崩され先制点を献上してしまった。前半の終了間際にもパスミスから失点し、2点のビハインドで後半に突入。劣勢に立ちながらも愛媛の選手たちは諦めてはいなかった。ポジションを細かく修正しつつ、カウンター攻撃で反撃を試みる。そして、徐々にリズムを掴み始めた。
後半8分、自陣ゴール前からのカウンター攻撃で伊井選手が繋ぎ、最後は行友選手が左足を振り抜き、見事ゴール! チームメイトと喜びを分かち合う行友選手。応援席も拍手や太鼓の連打で歓喜に包まれる!
1点を取り返し、一気に活気付く愛媛イレブン。サポーターによる応援の音圧も更に高まり、攻撃陣の勢いも増していく。すると、行友選手のゴールから僅か3分後の後半11分。敵陣内・左サイドからの愛媛による攻撃で、ペナルティエリア内にて相手DFに味方選手が倒され、PKを獲得。皆が祈るような想いで見つめる中、FW梶原彗汰選手が落ち着いてPKを決め、遂に愛媛が同点に追い着いた!
短時間での同点劇にスタンドからは拍手と共に大歓声も沸き起こった!
思わぬ展開に慌てる静岡学園ベンチ。選手を入れ替え、愛媛に傾いた流れを取り戻そうと必死だった。その効果もあってか、その後は一進一退の攻防が続き、スコアは動かぬまま後半が終了した。
90分を経過してスコア「2-2」。引き分けとはならず、決着をつけるため延長戦へと突入。
延長に入ると、心配していたスタミナ面の差が表れ始めた。愛媛は疲労が抜け切っていない中1日での連戦だが、相手は、この試合が初戦ということで、充分に休養も取れていて、体力も温存できている状況。この差は大きく、時間の経過と共に愛媛の選手たちに疲労が重くのしかかってきた。選手たちの足が徐々に止まる中、それでも耐え抜き、延長前半を無失点で切り抜ける。
しかし、延長後半3分に自陣ペナルティエリア内でハンドの反則を取られると、相手にPKを決められリードを許した。
最後の最後まで諦めず、GK黒川雷平選手を攻撃参加させるなど、戦う姿勢を見せ続けてくれた愛媛だったが、時間は過ぎ去り、遂にはタイムアップ。110分間に渡る激闘は、最終スコア「2-3」で静岡学園高校の勝利という結果に終わった。(この結果、静岡学園高校のプレミアリーグ2022への昇格が決定)
夢破れた愛媛FC U-18だが、中1日での連戦という厳しい状況下でも、強豪チームを相手に臆することなく挑み、良く頑張ってくれたと思う。
結果は出せなかったが、大いに褒めてあげたい。この試合、4人のJリーグ入団内定選手を全て投入し、フルメンバーで愛媛に挑んでくれた静岡学園高校には感謝したい。愛媛の選手たちにとっては、本当に良い経験になったと思うし、連戦を通じ様々な事を学んでくれた筈である。
サッカーだけでは無く、今後の人生においても糧となるものを得られたのではないだろうか。
4月に開幕する2022シーズン。愛媛FC U-18は再度、プリンスリーグ四国からプレミアリーグ昇格を目指す戦いとなる。チームに残った2年生や1年生の選手たちは、先輩たちの夢を引き継ぎ、昇格を成し遂げる力を持っていると思うので、新シーズンの活躍にも期待したい。
「愛媛FC U-18チームを卒業していく3年生の皆さん、数ある選択肢の中から愛媛FCを選んでくれてありがとう。
依然、厳しい社会情勢の中、サポーターとして充分な応援ができず、申し訳ありませんでした。そんな中、数少ない有観客試合では、素晴らしい闘志を魅せてくれたことを、本当に誇りに思います。愛フィールド梅津寺での試合の際、いつも元気の良い挨拶と共に、応援横断幕の掲出や撤収を手伝ってくれてありがとう。助かりました!
3年間、出場機会に恵まれない選手もいたことと思います。悔しさを抱えながら、人知れず影での努力を続けてこられたことは将来、自分の財産になると思いますし、周囲の人たちを幸せに出来る原動力にもなると思います。このチームで弛まず注ぎ続けた情熱を、これからも忘れないでいてください。改めて、ご卒団おめでとうございます。U-18チームでの3年間、お疲れ様でした。また、何処かのスタジアムで、お会いしましょう!」
<松本 晋司(まつもと しんじ)プロフィール>
1967年5月14日、愛媛県松山市出身。愛媛FCサポーターズクラブ「Laranja Torcida(ラランジャ・トルシーダ)」代表。2000年2月6日発足の初代愛媛FCサポーター組織創設メンバーであり、愛媛FCサポーターズクラブ「ARANCINO(アランチーノ)」元代表。愛媛FC協賛スポンサー企業役員。南宇和高校サッカー部や愛媛FCユースチームの全国区での活躍から石橋智之総監督の志に共感し、愛媛FCが、四国リーグに参戦していた時期より応援・支援活動を始める。