第221回 代表限界説を払拭する35歳の魅力とは(長友佑都)
7大会連続となるサッカーW杯出場を目指す森保ジャパン。2月1日、埼玉スタジアム。グループBの首位を走るサウジアラビアを2対0で撃破して、トンネルの先の光が大きく見えるようになってきた。
参考までに3月2日時点でのグループBの順位を確認しておこう。
1位サウジアラビア6勝1分1敗、勝ち点19。
2位日本6勝2敗、同18。
3位オーストラリア4勝3分1敗、同15。
4位オマーン2勝2分4敗、同8。
5位中国1勝2分5敗、同5。
6位ベトナム1勝7敗、同3。
2位までは文句なし。3位の場合、アジアグループAの3位、さらには南米5位とのプレーオフが待っている。サバイバルは茨の道となりそう。
森保ジャパン、残すはアウェイのオーストラリア戦(3月24日)とホームのベトナム戦(29日)の2試合。ベトナムは問題ないとして、心配なのはシドニーでのオーストラリア戦だ。
ホームでの試合は日本が2対1で勝利したものの、尻に火がついているオーストラリアは、それこそ決死の覚悟でくるはず。最終戦の相手を考えれば、オーストラリア戦は引き分けでも悪くないが、できれば敵地で引導を渡し、最終戦を待たずしてカタール行きを決めたいところだ。
オーストラリア戦のキープレーヤーとして、このところ評価が乱高下しているDF長友佑都(FC東京)をあげたい。35歳の長友は、これまで10年南アフリカ大会、14年ブラジル大会、18年ロシア大会と3大会連続でW杯に出場している。
日本人選手のW杯最多選出は川口能活(U-19日本代表GKコーチ)、楢崎正剛(名古屋アカデミーGKコーチ)の4回。もし長友がカタール大会に出場すれば、フィールドプレーヤーとしては史上最多となる。
その長友の評価が暴落したのは昨年10月8日、0対1で敗れたアウェイでのサウジアラビア戦。攻守に精彩を欠き、後半途中からベンチに退いた。
メディアの評価も芳しいものではなかった。東京五輪代表で、このところ進境著しいDF中山雄太(ズヴォレ)を起用すべき、と主張する者もいた。
長友起用の理由について聞かれた森保一監督は「(現行ルールは)交代枠が五つあるからうまく活用したい」と述べるにとどめた。
代表限界説も飛び出すなか、2月のサウジアラビア戦での長友の動きは見違えるようだった。後半5分には、MF南野拓実(リバプール)からのパスを逆サイドのMF伊東純也(ゲンク)に振り、2点目をお膳立てした。体を張った守備でもチームに貢献した。
試合後のコメントが振るっていた。
「皆さんの批判が僕の心に火をつけてくれた。今日は生きるか死ぬかだった。今日、活躍できなければ、僕が代表にいる意味はないとさえ思っていた」
この負けん気の強さが、長友の最大の持ち味だ。まだ死んでもらっては困る。
<この原稿は『サンデー毎日』2022年3月20日号に掲載されたものです>