第222回 多彩な攻撃を演出するSHは23年W杯代表の顔となるか(齋藤直人)
ラグビー新リーグ・リーグワン1部は第9節を終え、東京サントリーサンゴリアスが8勝(不戦勝2)1敗、勝ち点37で首位を走っている。
サンゴリアスといえばリーグワンの前身トップリーグで優勝5回、日本選手権優勝8回を誇る名門。メンバーには大学ラグビーの花形選手や世界のビッグネームが名を連ねる。
おそらく、このチームのいちばんのファンはサントリーの佐治信忠会長だろう。
――サンゴリアスの魅力は? との質問に、こう答えている。
「攻撃ですね。アタック力、大量得点、こういったところがサンゴリアスの魅力ですよ。バックスとフォワードの絶妙のコンビネーションもそうですね」(サンゴリアスHP2008年1月7日配信)
サンゴリアスのスローガンは「アグレッシブ・アタッキング・ラグビー」。316得点(不戦勝は21対0扱い)、43トライ(不戦勝は3トライ扱い)は、いずれもリーグ最多である。
その原動力となっているのがニュージーランド代表40キャップのダミアン・マッケンジー、オーストラリア代表38キャップのサム・ケレビら外国出身選手。日本代表の流大、中村亮土との連係も日を追ってスムーズになり、虎視眈々と初代王者の座を狙っている。
今ではチームになくてはならない存在になったのは、2季目のスクラムハーフ(SH)齋藤直人である。
桐蔭学園高校、早稲田大学とラグビーのエリートコースを歩み、4年時には主将として11年ぶりの大学選手権優勝に貢献した。卒業前にはサンウルブズの一員として世界最高峰のスーパーラグビーも経験した。
昨年6月に代表初キャップを刻んで以降、ジェイミー・ジョセフヘッドコーチ率いるジャパンにもコンスタントに招集されている。
リーグワンでは多彩な攻撃を演出するだけでなく、同ポジショントップとなる4トライをあげている。
かつて、早大の先輩でジャパンのSHとしてW杯2大会(1991年イングランド他、95年南アフリカ)に出場した堀越正巳は言う。
「何よりパスのテンポがいい。そればかりでなくディフェンスもできる。齋藤には将来的に南アフリカ代表の(ファフ・)デクラークのようになってほしい」
デクラークとは2019年W杯日本大会で3回目のW杯優勝を果たした南アフリカの不動のSH。パス回しの巧さやキックの正確さだけではなく、大男にも果敢にタックルを見舞う鼻っ柱の強さを見せつけ、スタンドを沸かせた。齋藤にはデクラークになれるだけの資質があるというのだ。
サンゴリアスには同ポジションに流という5学年上の先輩がいる。W杯日本大会では全試合にスタメン出場した。
その流は「直人は今後のサンゴリアスと日本代表を背負っていく存在です」と、自らの後継者であることを認めている。
それに対し、齋藤は「今後」ではなく「現段階」で、「大さんのポジションを狙っている」と明言している。W杯フランス大会は、もう来年である。
<この原稿は『サンデー毎日』2022年4月3日号に掲載されたものです>