「ブルーマンデー症候群」という言葉がある。休み明けで憂鬱な気分に陥ることから「月曜病」とも言うらしい。勤労世代の自殺者が月曜日の朝に集中しているというデータもある。せめて夜にプロスポーツの試合でもあれば、「今日はさっさと仕事を切り上げ、ビールでも飲みながら、家のテレビで試合でも観るか」と気持ちを切り換えられるのだが、月曜日の夜に限ってプロ野球もJリーグもやっていない。

 

 スポーツの語源である「デポルターレ」には気晴らしの意味もある。プレーする側だけでなく、観る側、支える側もスポーツを通じて、いくばくかの解放感を得ることができる。ストレス社会の現代、月曜日の夜にこそスポーツは必要ではないか。かねて、そう主張してきた。ゆえに、この企画には拍手を送りたい。

 

 女子ソフトボールの新リーグ「ジャパンダイヤモンド(JD)リーグ」が28日、千葉・ZOZOマリンスタジアムで開幕した。昨季リーグ戦2位のトヨタが前年王者のビックカメラ高崎を1対0で下し、幸先のいいスターを切った。近年、スポーツの世界では新リーグの創設が相次いでいるが、月曜日の船出はJDリーグくらいだろう。反響はどうだったか。「スポナビのPV数は30万回以上。想定を超える数字でした」と島田利正チェアマン。

 

 新リーグが月曜日の夜に開幕戦を行った理由はふたつある。ひとつは選手サイドの要望。「ナイターでやってみたい」との声が多かったという。カクテル光線の中での試合に憧れを抱いていたのかもしれない。もうひとつは、月曜日がプロ野球の移動日にあたるということ。「プロ野球とソフトボールは同じダイヤモンドスポーツ。プロ野球ファンを取り込めないものか。また(月曜日は)プロ野球のない日だけに、メディアの露出も期待できる。新しいファンを獲得するためにも『マンデーソフトボール』を根付かせていきたい」。そう語る島田は北海道日本ハムの元球団代表である。「ソフトボールは塁間が短く、プロ野球にはないスピード感が最大の持ち味。内野手はファンブルさえ許されない。こうした魅力を、もっとアピールしていきたい」

 

 プロスポーツ空白時間帯に目を付けたのはJDリーグが初めてでてはない。プロ野球のパ・リーグも2001年から5年間、「マンデーパ・リーグ」というネーミングで試合を行っていた。セ・リーグとの人気格差解消が主たる目的だった。

 

 月曜夜にスポーツを――。鬱々としたブルーマンデーにマッチ1本程度でも希望の火を灯すことができるのなら、それも社会貢献活動のひとつだろう。継続は力なり、である。

 

<この原稿は22年3月30日付『スポーツニッポン』に掲載されたものです>


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