JAPAN RUGBY LEAGUE ONE(リーグワン)は佳境を迎えている。ディビジョン1第13節終了時点でクボタスピアーズ船橋・東京ベイはリーグ2位につけるなど好調をキープ。昨季4強からの「NEXT LEVEL」を目指すチームは勢いのある若手が続々と出てきている。中でもユーティリティバックス根塚洸雅の活躍が光る。

 

 根塚は兵庫県出身の23歳。東海大学附属仰星高校、法政大学を経て、昨年4月に入団した。身長173cm、体重82kgと小柄だが力強いランが持ち味だ。4月22日現在、WTBで7試合出場。ディフェンスラインを突破した回数を指すラインブレイクでは19とリーグトップに立つ。

「最初の一歩の仕掛けるタイミングと間合いをすごく気にしています。キックカウンターでは対面にFWの選手だったり、ミスマッチがあれば思い切って勝負しようと決めているので、そこが結果に繋がっているのかと思います」 

 

 リーグワンデビューから衝撃的だった。試合前のオンライン会見でフラン・ルディケHCが「コーガ(根塚)はやってくれると思う」と“予言”した通り、鮮烈な印象を残した。2月26日、ホームの江戸川陸上競技場で行われた第7節、トヨタヴェルブリッツ戦でヘッドキャップを装着した根塚は、力強いランで何度も縦を突破した。トレードマークの笑顔で相手の守備網を切り裂き、プレーヤー・オブ・ザ・マッチ(POM)にも選出された。

 

「自分がどんなプレーができるかを観てもらえることを楽しみにしながら挑んだ。グラウンドで一番楽しんだ。とても良い日でした」

 試合後の記者会見でも笑顔が弾けた。その後の彼の快進撃は止まらなかった。この試合から7戦連続でフル出場を果たしている。第10節の東芝ブレイブルーパス東京戦でもチームの勝利に貢献し、POMに輝いた。

 

 チームメイトからの評価も高い。キャプテンでジャパン55キャップのCTB立川理道はトヨタV戦後、「加入してから元気が良くて、チームにエナジーを与えてくれる選手。プレシーズンから素晴らしいパフォーマンスを続けてきていた。若く才能のある選手なので、これからがすごく楽しみ」と語っていた。オーストラリア代表71キャップを誇るSOバーナード・フォーリーの評価はこうだ。

「コーガと一緒にプレーできて楽しいし、マインドが素晴らしい。“いつもアタックしたい”という気持ちが見えるし、ラグビーを純粋に楽しんでいる気がする」

 

 チームHPのプロフィール欄に<自分の注目してもらいたいところ>の項目は<だいたいのことを笑顔で楽しんでいるところ>と記載されている。その通り、根塚は実に楽しそうにプレーする。そのことについて聞くと、本人からはこう返ってきた。

「チームでしんどい時、流れは絶対あると思う。そういう時でも“楽しもう”と意識はしているんですが、チームが乗っている時や自分がいいプレーをした時は自然と楽しんでいる。どんな時でも“楽しもう”という意識は持とうとしているので、そこから笑顔が生まれているのかと思います」

 

 コリジョンを恐れず、積極的にランを仕掛けるためにヘッドキャップは欠かせない。BKの選手としてはそれほど多くないヘッドキャップを装着し、試合に臨んでいる。

「大学3年の時に何度か脳震盪になったということもあるのですが、“リーグワンだと海外の選手やコンタクトという部分では、ひとつひとつレベルが上がる”と大学の時から思っていた。そのために“慣れておこう”と思って大学4年の時から付けるようにしています。最初は周りの声が少し聞こえにくかったり、締め付けられている感じがしたり、やりにくかったですが、今は結構慣れてきた。付けている方が思い切ってプレーでき、インパクトに対しては不安なくいける」

 

 今季のブレイクで、当然ジャパン入りへの期待がかかる。

「桜のジャージーはラグビーをやっている上で引退するまでに一度は着たい。フィジカルでは自分は候補になりにくい方だと思いますが、タフネスさだったり仕事量だったり、試合でいえばブレイクだったりトライという自分の強みを出して、まずは代表の方の目に留まれるようにというのを目指してやろうと思います。まずは1年目ですのでリーグワン優勝を目指している。個人としてはWTBを新しくやっているので、5mの中での強みをもっともっと成長させながら代表に選ばれる選手になっていければと思っています」

 

 彼の切れ味鋭いランは、観衆を惹き付け、ファンを歓喜させる。<自分を通じて笑顔になってくれる人が増えたらいいなというのがラグビーを続けている理由なんです>(『スポーツナビ』2022年2月17日更新)。笑顔でフィールドを駆け抜ける根塚のプレーには一見の価値がある。

 

(文/杉浦泰介、写真/クボタスピアーズ船橋・東京ベイ提供)