「J3で優勝してのJ2復帰」という目標を掲げ、2022シーズンをスタートさせた愛媛FC。しかし、J3はそんなに甘い場所ではなかった。開幕戦では、愛媛が先制するもカターレ富山に逆転され敗戦。第2節はFC岐阜相手に「0-3」で完敗。第3節、いわきFCとの対戦では、アディショナルタイムに同点に追い着くが直後に勝ち越され惜敗。リーグ戦開幕から3連敗となり、J3での戦いは屈辱的な最下位からのスタートとなってしまった。

 

「聞いてたのと違う!」

 

 クラブ側からは各種報道を通じ、またキックオフフェスタなどから、リーグ戦における高い目標設定をシーズン前に聞かされていた私たちサポーターにとっては、まったく予想だにしない展開なだけに戸惑いは隠せない。

 

 確かに、相次ぐ負傷者や新型コロナウイルス感染者がチーム内に出たことにより台所事情が、より厳しく、公式戦(出場選手)の遣り繰りが大変な状況にあることは理解している。ただ、欠員が出たとしても皆で補える能力のある選手たちが集まり、開幕に向けチーム力も高まっている状況にあると信じていた私たちにとっては裏切られたような感情さえ芽生えてしまう。

 

 第3節(ホームゲーム)の試合終了後(敗戦直後)、愛媛FCの応援先導のコアとなっているゴール裏席では、サポーターとクラブ代表者との緊急ミーティングが行われ、サポーター其々の意見がクラブ側へと伝えられていた。

 

 そして迎えた第4節、アウェイでのY.S.C.C.横浜との対戦。開幕3連敗という情けない結果を受けてか、ファンやサポーターたちの気持ちが伝わったのかは分からないが、選手たちの意識は明らかに変わろうとしていることが感じられた。終始、球際で相手に負けないという気持ちが愛媛の選手たちから伝わってくるし、J3のスタイル(戦い方)に合わせるべく、割り切ったプレーも随所に見られた。最後は、慣れないポジションながら試合終了まで全力で走り続けたFW近藤貴司選手が決勝ゴールを決めて、愛媛FCが今季初勝利を収めた。

 

 4月10日(日)には、ホームのニンジニアスタジム(松山市上野町)にSC相模原を迎え、第5節が行われた。前節での初勝利の良い流れを受けて、気持ちのこもった素晴らしい戦い振りを魅せてくれた。対戦相手の相模原も引くことなく終盤まで一進一退の攻防が続く。しかし、後半37分。相手のカウンター攻撃からミドルシュートを決められ、先制点を奪われる。ともすれば俯き肩を落とす場面なのだが、この日は不思議と愛媛の選手たちも愛媛サポーターも“まだやれるぞ!”という雰囲気に満ち溢れ、スタンドも得点へ、そして勝利への渇望を感じる程に応援のテンションが高まっていた。すると失点から僅か2分後、愛媛のコーナーキックからDF鈴木大誠選手がゴールを決め同点! さらには後半44分、2種登録(愛媛FC U-18)のMF行友翔哉選手が逆転弾を叩き込み、愛媛FCが見事、連勝を果たした。

 

 試合終了の笛の音と共に、スタジアムは歓喜に包まれ、忘れ掛けていた心震わす感動を蘇らせるような素敵な瞬間を仲間達と味わうことができた。

 

 今節、得点シーンは、もちろん素晴らしかったが、GK徳重健太選手を中心にDF陣も粘り強い守備を魅せてくれ、幾度となくチームを救ってくれた。試合後、ゴール裏スタンド前に挨拶に来てくれた選手たちには、勝利への感謝と労いが感じられる大きな拍手がサポーターから送られた。

 

 昨年(2021年)の4月21日(水)に松本山雅FCに勝利してから、ホーム(ニンジニアスタジアム)で勝つことができていなかった愛媛FC。実に1年振りのホームゲームでの勝利である。地元のファンやサポーター、支援者たちが、どれ程、待ち望んでいたことか……。ようやく、ニンジニアスタジアムに皆の笑顔が戻ってきた。そのことが、本当に嬉しい!

 

 この日、ひとまずホームゲームの呪縛から解き放たれた訳だが、シーズン当初に設定された高き目標には、まだまだ手が届かない状況にある愛媛FC。チーム内での意識改革は進んでいるように思われるが、戦術の熟成やコンディションの調整等の各種課題にも早期に取り組み、リーグ戦における大幅な出遅れを取り戻してもらいたい。

 

<松本 晋司(まつもと しんじ)プロフィール>

1967年5月14日、愛媛県松山市出身。愛媛FCサポーターズクラブ「Laranja Torcida(ラランジャ・トルシーダ)」代表。2000年2月6日発足の初代愛媛FCサポーター組織創設メンバーであり、愛媛FCサポーターズクラブ「ARANCINO(アランチーノ)」元代表。愛媛FC協賛スポンサー企業役員。南宇和高校サッカー部や愛媛FCユースチームの全国区での活躍から石橋智之総監督の志に共感し、愛媛FCが、四国リーグに参戦していた時期より応援・支援活動を始める。


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